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 真夜中に目が覚めた。  複数の駆けるような足音。衣擦れや慌てたような話し声。気になってベッドから下り、カーテンを開ける。 「……もしかして、魔物?」  騎士達が松明(たいまつ)を持っているのを見て、言葉が漏れた。その時、控えめにノックされて扉を開ける。 「シャーロット、起こしてしまってすまない。魔物が森から現れた。今から討伐に向かう」 「……っ!」 「すぐに戻ってくる。少しの間、留守にするが専属侍女としてハンナをつける。ハンナは、護衛もできるから安心してほしい」 「アーサー様の大切なシャーロット様の身の安全は、わたくしにお任せてください」  ハンナが得意げに胸を張った。 「アーサー様はシャーロット様に夢中ですからね。シャーロット様の専属侍女の座をかけた争いは壮絶でした。まあ、私が勝ちましたけど」  びっくりしてアーサーに視線を移すと、アーサー様が片手で顔を覆っていた。 「ハンナ、勝手に色々話すことは禁止だ……」 「それは無理です。今日からシャーロット様がわたくしの主ですので、求められれば話をします」 「あー、わかった。とりあえず、一度下がれ。シャーロットと話したい」  片手でハンナを追い払ったアーサー様と向き合う。頬に熱が篭っているのが、薄明かりで見えていないことを願った。 「ハンナに言われてしまったが、俺の気持ちはシャーロットにある。帰ってきたら、シャーロットを更にとことん甘やかすつもりだ。だから、覚悟しておいて?」  亜麻色の髪を一房掬われて、唇を落とされる。その色っぽい仕草に私の心臓が煩いくらいに音を立てていくのを感じていると、まっすぐな視線を向けられて顔が一段と熱くなった。 「……アーサー様、ご武運をお祈りしております。お戻りになられるのを、お待ちしています」  アーサー様と辺境騎士団は、夜明け前に出陣した。
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