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 ◇  アーサー様と辺境騎士団が出陣してから、一週間が過ぎた。  怪我人が運ばれてきたとハンナから聞いた。怪我をした騎士達から聞いた状況では、最初は数匹の魔物だったのが、森の奥から次々と出てきているらしい。  アーサー様の指揮の下、討伐しているが魔物の出没が止まらない。それに加えて、回復薬が底をつき、体力勝負になってきていると聞いた時には、走り出していた。  団長室に向かう。そこには副団長のレオン様がいた。 「どうしましたか、シャーロット嬢」 「回復薬が足りないと聞きましたが、本当でしょうか?」 「ええ、回復薬は希少なものですし、辺境は魔物が多く出るので慢性的に不足しているのです。今のところ、誰も大きな怪我をしていないのが幸いですが、疲労は確実に蓄積されています。魔物の出没がなんとか止まるといいのですが……」  聖女の回復薬を持ってくることが出来ていれば、と悔しくて涙が込み上げてくる。でも、今は過去のことを悔やんでいても、なにも変わらない。今、私にできることをやるべきだと両手で頬をたたいた。 「レオン様、回復薬を作って届けましょう!」  ハンナと副団長のレオン様は目を見開いている。誰でも作れる私の低級回復薬なんて、役に立たないのかもしれない。 「えっと、私には上級の回復薬である『聖女の回復薬』を作ることはできません。私の作れる回復薬は、誰でも作れる下級のものだけです。だけど、こちらに来る前までは、子爵家のすべての回復薬を作っていたので、量を作ることは得意です」 「え?」 「へ?」  二人から間の抜けた声がこぼれた。
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