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呆れられてしまったのかもしれない。洋服をぎゅっと握りしめて、口をひらく。
「あっ、その、回復薬の質が足りなくても、量で補えることができればと思ったのですが……余計なことを言ってしまって、すみません……」
少しでもアーサー様や辺境騎士団の役に立ちたい、役に立てると思ってしまった自分が情けなくて、声が小さくしぼんでいく。
「──本当ですか?」
「え?」
「回復薬を作れるというのは、本当でしょうか?」
うつむいていると、頭の上からぽつりと質問が落ちてきた。
「はい、低級の回復薬なら……作れます」
「材料や必要なものをすぐ用意します! ハンナ!」
「もちろんです!」
必要な材料や道具を伝え終わると同時に駆け出していくハンナに目を瞬かせる。眼鏡のフレームを掛け直したレオン様と目が合った。
「シャーロット嬢、どのように言われていたのかは知りませんが、回復薬は作ること自体がとても難しいのです。優秀な魔法薬師でも一日に数本の低級回復薬を作ることが精一杯です」
「低級回復薬を一日に数本ですか? 中級や上級ではなくて……?」
「はい、そうです」
レオン様が真剣な表情でうなずく。
「さあ、これから忙しくなりますよ!」
「はい……っ!」
マローラ子爵家で役立たずと言われ続けてきた私を、必要としてくれてる人がいる。胸に熱いものがこみ上げてきて、気が付くと返事をしていた。私は手の甲で涙を拭き、レオン様と一緒にハンナのあとを追いかけた。
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