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 ◇  沢山の薬草や鍋など必要なものが用意された。ハンナやレオン様、手の空いているメイドも後ろで控えてくれている。 「それでは、回復薬を作るのをはじめます」  いつも一人で作っていたから、作業を見られるのは落ち着かない。でも、それ以上に回復薬を作ることだけに集中できるのは有り難かった。マローラ子爵家で使っていた壊れかけの鍋や粗雑な薬草ではない、よく磨かれた大鍋と状態のよい薬草を手に取る。  まだハルジオンの辺境に来てわずかな期間しか過ごしていないが、みんなの役に立ちたい。目をつむって、深呼吸をひとつした。  大鍋に注いだ水を魔力水に変化させる。腐った水じゃないから造作もない。綺麗に洗った薬草と刻んだ薬草の実を大鍋に入れて、魔力と練り込む。  希少な実だからと少なめに渡されなかったので、薬効を増幅させる魔術ではなくて効能の質を高める魔術をかける。あとは、魔力の温度を上げつつ煮込んでいき、水面が私の魔力と同じ翡翠色にキラリと光ったら完成。 「これで完成です。あとは、鑑定して、瓶に詰めていく作業をお願い──」  後ろを振り向いたら、呆気に取られたハンナやレオン様の顔があった。変なところがあったのだろうかと不安で視線が揺れる。
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