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 ◇  それから──  翡翠色をした最上級の回復薬は、アーサー様のいる前線に届けられ、全員が無事に帰還することができた。  アーサー様とレオン様から、私の回復薬が最上級の回復薬になったのは、寝不足と魔力不足が解消されたことと手入れされた道具と状態のいい薬草で作ったからではと言われた。さらに、マローラ子爵家で作っていた私の下級回復薬も、本当は上級回復薬だったのではないかとレオン様に言われ、目を見開いて固まってしまった。  そして、なぜか今、私はアーサー様と王城に招待されていた。 「長らく謎であった魔物の発生する原因に辿り着き、魔物の発生を消滅させた者を讃えよう! アーサー・ハルジオン辺境伯、マローラ子爵令嬢、シャーロット・マローラ」  陛下がアーサー様と私の名前を呼ぶと、会場から割れんばかりの拍手喝采受ける。  アーサー様が出陣した魔物討伐で、次々と現れる魔物を駆逐していくと陽の光も届かない森の奥に魔物が生まれる沼を見つけた。禍々しい沼は、紫色と黒色を混ぜたように濁り魔力が溜まり、魔物を生み出す胎の役割をしていた。 「魔物に傷つけられ、血を流した者もいる。家族や愛する人を失った者もいるだろう。だが、もう魔物に怯えることはない──ここにいるシャーロット嬢の創り出した、聖女の宝石で魔物を滅ぼすことができる!」  魔物の発生する沼に回復薬が効くとわかったのは、本当にたまたまだった。帰還したアーサー様から話を聞いて、回復薬を最大に濃縮したものを魔物の沼に沈めてみたら沼は浄化され、魔物が消え去った。回復薬を濃縮した結晶は、国を越えて広まる内に、なぜか聖女の宝石と呼ばれている。  マローラ子爵家で無能だと言われていた私が、陛下に褒められるなんて夢にも思ったことはない。私を励ますようにアーサー様に肩を抱き寄せられる。視線を向けると、柔らかく見つめられていた。  式典が終わると、アーサー様に沢山の人が挨拶に来た。しばらく隣で挨拶をしてから、私はそこからそっと離れた。
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