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 私にだって心がある。あんな酷いことをしたハウエル様に触れられるのを想像するだけで、嫌悪感で身体がふるふる震えていく。  それに、回復薬の結晶は魔物に怯える人たちを救うもので、回復薬は人を癒すためのもの。自分のことしか考えていないイザベラを正面から見つめた。 「…………いや、です」 「まあ、お義姉様ったら口答えをするつもり? いいこと? 意見は聞いていないの。はあ、そうね。乱暴なことはしたくなかったけど、辺境伯の婚約者じゃなくなればマローラ子爵家に戻ってくるしかないものね」 「え? どういうこと……?」  ハウエル様に腕を掴まれた。声を上げようと思った時には、布で口を覆われて薬品の強い匂いを嗅がされる。かくん、と膝の力が抜けていく。 「ふふっ。傷物になってしまえば、ハルジオン辺境伯のところにいられないでしょう?」  ゾッとするくらい愉しそうに笑うイザベラを見て、絶望する。朦朧としてきた身体を必死に動かしても、ハウエル様の腕から逃げられない。身体を密着させてくるのが気持ち悪いのに、なにもできない自分が情けなくて、イザベラを睨みつける。 「やあだ、睨むなんて怖い。んふふ、素敵な夜を過ごしてくださいね……お義姉様」  ああ、またか……。アーサー様や辺境の人達と関わって、居場所ができたと思ったのに。またイザベラに全部奪われて、追い込まれていく。惨めで悔しくて涙がせり上がってくる。
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