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 日の当たらない屋根裏部屋の粗末なベッドで伏せていると、イザベラがいつも通りノックをしないで入ってきた。 「いつ来てもお義姉様の部屋は、埃っぽいわね。侍女はなにをしているのかしら? ああ、お義姉様のために働きたい侍女は誰もいないんだったわね」  蔑むように、くすくす笑う。お母様が亡くなり、イザベラが来てから私の味方をする使用人や侍女は全て解雇された。私がなにかを言い返すと、夕食の硬いパンすらもらえなくなるので、表情を出さないようにうつむく。 「ねえ、お義姉様。赤獅子の辺境伯の噂は知っていて? 魔物と戦って醜い傷が沢山あるらしいのよ。常に魔物が現れるから、兵士達は昼夜問わず戦い負傷が絶えなくて、辺境の地は、どこにいても血の匂いがするみたいよ」  辺境のハルジオンには、燃えるような赤い髪と瞳を持つ獅子のようなハルジオン辺境伯がいる。魔物の脅威から国を守っているけれど、常に戦いをしているため野蛮だと恐れられ『赤獅子の辺境伯』と呼ばれている。  魔物は森の奥から生まれるとされているが、詳しくはわかっていないため、出没するたびに討伐するしかない。 「お義姉様は低級の回復薬しか作れないけど、少しはお役に立てるのではなくて? お義姉様の婚約者がわたくしに夢中になってしまったのが申し訳なくて、赤獅子の辺境伯をお父様に勧めてみたの。マローラ子爵家といえば、聖女の回復薬で有名ですものね? あっという間に決まったそうよ。素敵な結婚相手が見つかってよかったわね、お義姉様」  イザベラの言葉に、身体が震えた。
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