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 ◇  剣だこのあるごつごつした大きな手で花嫁のヴェールを上げられる。 「シャーロット、綺麗だ……」  私とお揃いの真っ白なモーニングコートを着こなすアーサー様に目を奪われる。赤い瞳にまっすぐ見つめられて、頬に熱が集まっていく。  ゆっくり顔が近づいて、触れるようなキスを交わす。爽やかな甘い香りに包まれると、あまりに幸せで自然と涙が溢れてしまう。 「アーサー様、私、……幸せです」  アーサー様の目がやわらかく細められる。私の大好きな表情に胸がときめいていく。 「大好きです、アーサー様」 「シャーロット」  アーサー様の逞しい腕にすっぽりと閉じ込められる。みんなの見ている教会なのにと思う気持ちと、アーサー様の爽やかな甘い匂いに包まれたまま、胸の音をもっと聞いていたい。どうしようもなく幸福感で心が満たされていく。 「愛しています、シャーロット。俺の隣で、これからもずっと笑っていてほしい」 「……はい」  見つめあう赤い瞳はとても甘い。  アーサー様と出会えたことを神様に感謝する。それから、愛しい人に吸い寄せられるように顔が近づいて、二回目の誓いのキスをした。  教会の鐘が祝福の音を鳴らす。  うららかな春、私はアーサー様の花嫁になった。  真っ白なウェディングドレスを身に纏い、ハルジオン辺境にある由緒ある教会で永遠を誓う。副団長のレオン様、ハンナ、辺境騎士団の騎士。沢山の人が参列して笑顔でお祝いの言葉をかけてくれる。  野蛮な辺境と呼ばれていたハルジオンの辺境は、いつしか聖女の土地と呼ばれるようになった。赤獅子の辺境伯と同じ赤い花が沢山植えられ、今日も爽やかで甘い匂いがふわりと領地を流れていく──…  おしまい
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