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 殺気をまとうレオン副団長に、慌てて頭を下げて謝った。追い出されてしまう恐怖で、勝手に身体がカタカタと震えてしまう。 「シャーロット嬢、顔をあげて。レオンも言い過ぎだ、殺気をしまえ! 回復薬がないのは、シャーロット嬢のせいじゃないだろう。ここ最近、この地の魔物が増えていて回復薬が足りていないんだ。シャーロット嬢、来たばかりで責めるようなことを言ってしまって、すまない」  申し訳なさそうなハルジオン辺境伯に、慌てて首を横にふった。 「ハルジオン辺境伯閣下が謝ることはありません! こちらが悪いのです……本当に申し訳ありません!」 「いや、魔物が多く出没する辺境に嫁いできてくれるご令嬢は、本当にいないんだ。だから、俺は二十六歳まで独り身だ。シャーロット嬢がこんな俺と結婚してくれるなら、心から大切にすると約束する」  ハルジオン辺境伯の言葉に、びっくりして目を瞬いた。 「ハルジオン辺境伯閣下は、とても素敵な方です……っ! 魔物を怖くないと言えば嘘になりますが、私を追い出さず、置いてもらえるのですか?」  ハルジオン辺境伯は、言葉も瞳も穏やかであたたかい。まだ出会ったばかりだけど、とても素敵な人だと思う。 「貴女を追い出したりしない。そうか、ありがとう。俺のことは、アーサーと呼んでくれ──その、婚約者なんだからな……」 「は、はい。私のこともシャーロットとお呼びください」 「う、うむ。シャーロット、屋敷の案内をしよう」 「あ、ありがとうございます…………アーサー……さ、ま」  呼び捨てにするのは緊張してしまって、様を付けて呼ぶ。アーサー様が目を細めて笑った途端に、心臓がひとつ大きく跳ねる。  アーサー様に大きな手を差し出され、手を添えると優しく握られた。
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