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◇
アーサー様に屋敷を案内してもらう。
使用人の紹介や辺境騎士団の団長をアーサー様が務めていることも聞いた。最後に、日当たりのいい部屋にやって来た。花の刺繍をあしらった若草色のカーテン。ふかふかした明るい絨毯、猫脚のテーブルとソファなど可愛らしい調度品に心が弾む。
「ここはシャーロットの部屋だ。好みがわからなくて、若いメイドたちに聞いて揃えたのだが、どうだろうか?」
予想外の言葉にびっくりして、胸に熱いものがこみ上げる。感激して目に涙が溜まった。私の顔を見ていたアーサー様が慌てたように口をひらく。
「……っ! 気に入らなかったのなら変更もできるから、泣かないでほしい!」
ふるふると首を大きく横に振った。
「ち、違うんです! こんなに素敵なお部屋を用意していただけたことが嬉しくて……。それにお部屋、すごく可愛いです。アーサー様、本当にありがとうございます……っ」
「そうか。気に入ってもらえてよかった」
アーサー様のほっとした顔を見たら、涙が引っ込んだ。すぐ後に、くう、と小さくお腹が鳴り、両手でお腹を慌てて押さえた。アーサー様を窺うと、ふいっと目を逸らされる。アーサー様の肩が小さく震えているのは、笑っているのではないと思いたい。
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