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アーサー様はハンカチを出すと、私の瞳から溢れていく涙を優しくぬぐう。 「シャーロット、母上が亡くなってから随分と辛い思いをしてきたんだな──よし、俺がシャーロットを沢山甘やかして、幸せにする!」 「え?」  突然の宣言に戸惑っていると、アーサー様は私の頭をあやすように優しくなでた。 「ほら、みんなシャーロットのことを守りたいって顔してる。レオンはああ見えて涙脆いんだ」  騎士団の大きな身体の人達が肩を震わせたり、涙ぐんでいる。副団長のレオンは、ハンカチで瞳を押さえていた。びっくりして瞬きを繰り返していると、アーサー様はまっすぐに私を見つめていた。 「シャーロット、俺は、俺の妻となる人を大切にしたい。シャーロットの居場所は、マローラ子爵家ではなく、ここだ。これから安心して寛いでほしいし、困ったことがあったら俺に頼ってほしい」  真剣な表情のアーサー様は、私に言い聞かせるように言葉を紡いでいく。心のやわらかな場所にアーサー様の言葉が染み込んで、また涙が溢れてきてしまう。でも、この涙は嬉しい涙だとわかった。 「……はい。ありがとうございます、アーサー様。ありがとうございます、みなさん」  笑顔のアーサー様に優しく頭をなでられる。心がぽかぽかする食事は穏やかに進んでいった。
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