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  「シャーロット、お前との婚約を破棄して、イザベラと婚約を結び直す。お前はイザベラの代わりに、赤獅子の辺境伯へ嫁ぐことに決まったからな」 「シャーロットお義姉様、よかったわね! 落ちこぼれのお義姉様がマローラ子爵家の役に立てるなんて光栄でしょう?」  徹夜で回復薬を作り終え、寝不足と魔力不足でふらふらな私は、いきなり婚約者に呼び出され、婚約破棄を告げられた。  優雅にお茶を飲むのは、私の婚約者でバートン伯爵家の次男ハウエル様と妹のイザベラ。イザベラは、お母様が亡くなった直後に父が再婚し、継母と一緒にマローラ子爵家に連れてきた()()()の義理の妹。 「……あの、どういうことでしょうか?」  二人は愉快そうに笑っている。私は視線を左右に揺らして、なんとか口を開いた。 「相変わらず鈍くて、醜いな! お前は低級の回復薬を作るしかできないくせに、婚約者が来ても身なりを整えることすらできないのか?」 「申し訳ありません……」  鏡で見た私は、確かに翡翠色の瞳の下の隈が酷かったし、亜麻色のパサついた髪は梳かしただけだった。ドレスはイザベラに奪われてしまい、それでも一番綺麗なものを着てきたのだけど、ハウエル様に叱られて頭を下げる。ハウエル様の舌打ちが頭上に響く。 「イザベラは上級の回復薬を作れる上に、常に愛らしく『聖女』という呼び名がぴったりなほど美しい。聖女のイザベラが魔物がうろつく辺境の、野蛮な赤獅子の辺境伯に嫁ぐわけには行かないだろう? それなら、お前が代わりに行けばいい」  冷たい視線のハウエル様が早口に(まく)し立てた。  マローラ子爵家は、代々回復薬を作っている。イザベラは、この国で唯一、上級の回復薬『聖女の回復薬』を作れるので、『聖女』と呼ばれている。 「あの、ですが……」 「うるさい、口答えはするな! 我が家もマローラ子爵も婚約者が代わることに賛成してくれている。もちろんイザベラも俺と同じ気持ちだ」 「わたくしもずっとお慕いしてましたわ……」  甘えた声を出すイザベラにハウエル様の瞳がどろりと甘く変わる。見つめ合い、顔が近づいて唇が触れそうになったのを見て、私は堪らず走り出す。後ろから、馬鹿にした二人の笑い声が追いかけてきた。
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