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体だけの関係 E
「あのさ。よかったら今日は後ろからいれてくんない?」
「いいよ」
俺から要望を述べることもないが、最初の一回以来、高輪叶人が俺に要望を伝えることもなかった。だから奇妙に感じた。いつもどおりシャワーを浴びて、高輪叶人はベッドの上で俺にフェラをする。それも喉の奥まで達するようなフェラで、高輪叶人は苦しそうに目の端をわずかに煌めかせる。
「もう大丈夫」
「そう? じゃあ、入れてほしい」
俺と高輪叶人の間にはさして前戯はない。高輪叶人はそうやって俺を勃たせて、同時に自らの後孔をローションを使いながらほぐす。
いつもと違って高輪叶人は俺に背を向け、尻を上げて上半身をペタリと下げた。なにか妙だと思ったら、左腕はその体を支えようと空中に浮いているものの、麻痺した右肩から下と右頬はそのままベッドにくっついて、まるでアスファルトに墜落した鳥のように思えた。
「このまますると首を痛めない?」
そう呟けば、高輪叶人は再び座って分厚い枕を引き寄せ、その枕の上に頭を落とす。首と肩とベッドの間に少しだけ隙間ができた。
「これでちょっとはましかな。気が向かないならいつもどおりでいいよ」
不自由そうに左を向いた顔の片目が俺を見る。
「なるべく負担にならないようにする」
「気にしなくていいのに。俺がそうしてほしいんだから」
いつもより露わな後孔に手を添えて挿入すれば、とぷりと忍び込んだ中は潤っていた。
「ぁ」
小さな声とともに、いつもと違って左手が背に伸び、挿入部を撫でさする。
「入ってる。少しだけ、待って」
高輪叶人は目を閉じ、その呼吸に連動するように入口が収縮する。それはいつも1分半ほどの時間。
「動いて、ん」
上半身が動かないよう腰骨をつかみ、なるべく首を痛めないよう抽挿する。びくびくと肩甲骨が揺れている他は、枕もあまり動いていない。けれども顔は完全に左を向いていて、長く続けるとやっぱり痛めるだろう。それはきっと高輪先生もわかっているはずだ。
「あ! は!」
腰を打ち付ける度にいつもより大きく空いたその唇からは肺から息を絞り出すような短く大きな声があがり、瞳はとろりと快楽に染まる。枕によだれのシミが広がっていく。
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