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「続き、しよ?」
「でも」
「しよ。お願いだから」
その直ぐ側で聞こえた感情の全く乗らない声は、有無を言わせなかった。
先程まで湿っていた部分に触れれば少し、乾いていた。高輪叶人はベッドサイドのローションを手にとって作業のように俺の局部に塗りたくる。このまま続けても良いのだろうかと高輪叶人の瞳を覗き込めば、その瞳は何の感情も浮かんでいなかった。何も。きっと、俺に求められているのは続きをすることで、できることもきっとそれだけだ。頭の中が次第にぼんやりとしていく。続きをしないと。
後ろを向いた高輪叶人の腰骨を押さえてゆっくりと挿入すれば、その体はびくりと動く。力のない、嬌声とも言えないため息のような小さな音が漏れる。
「ん」
高輪叶人の左手が自らの性器に伸び、ゆっくりと前後に動かされた。その酷く冷たい手に触れれば、その場所は明け渡される。ゆっくりと腰を打ち付けながら高輪叶人の性器を擦っていると、左腕が首に回された。その首が俺の右肩に倒される。
「ふ、ぅ……ん」
耳のすぐそばで聞こえるその声は、寝起きのあくびのように緩慢だ。けれども次第に性器が硬度をとりもどすうち、わずかにため息が熱くなるのを感じた。
「ふ、ぐぅ、はぁ」
同時にその声にしくしくとも表現されそうな、僅かな嗚咽が混じり始める。
「いく。だから一緒にいって」
「うん」
その根本を強く愛撫してとぷりと液が漏れるのと同時に、なるべく奥で吐精する。高輪叶人のゆっくりとした射精が終わればその力は全ての力を失ったかのようにベッドに倒れ、接合は自然と解除された。
右側を向いた何も映してなさそうな目の下には涙の跡がある。
「ごめん、ちょっと疲れたからさ、今日はこのまま寝る」
そう呟いて高輪叶人は目を閉じた。まるで消え去るように儚かった。だから思わず、その首筋に手を触れた。生きている。
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