1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
カラスになって一年が過ぎた。相変わらず村のみんなは誰一人帰って来ていない。都会の生活が気に入ったのか。或いは野垂れ死んでしまったか。真相は定かではない。
長慈はこのところ、ずっと自室に引きこもっている。まるで籠の中の鳥。会話らしい会話もほとんどしていない。
しかしこの日は、様子が違った。
「ガァーッ! ガァーッ!」
「どうした長慈。朝から騒いだりして」
「ガァーッ! ガァーッ!」
「カラスの真似なんかしてないでちゃんと喋るんだ」
「ガァァーーッ!」
「ち、長慈? ふざけるのも大概に……」
が、僕の声は届かず長慈は障子を突き破り、空の彼方へ飛び去っていった。
どうしたというんだ。近頃めっきり無口になったと思ったら急に騒いで。
その時だった。僕の目は眩い光に襲われた。
いつもより太陽が眩しい。目を開けてられないほどに。しかし周囲の景色は薄暗いまま。まるで僕の周囲だけにスポットライトが当たっているようだ。
すると僕の身体に異変が起こる。脚と脚の間から、もう一本の脚が生えてきたのだ。
三本脚のカラス……。聞いたことがある。確かやたーー
最初のコメントを投稿しよう!