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『よくぞ試練を乗り越えた。お前は神々に選ばれたのだ』
突然、どこからともなく声が聞こえた。
「僕が、神々に、選ばれた? どういうことだい?」
『その三本目の脚が何よりの証拠。これからは八咫烏として、神の地で神に仕えよ』
そうだ。八咫烏だ。何をしたのかは詳しく知らないが、神話に出てくる三本脚のカラスなのは知っている。
『我等はこれまで星の知的生命が100億を超えた時、試練を与え神の元に遣わす者を選出してきた。今回に措いては過酷な状況に置かれても最後まで自我を失わなかったお前が選ばれた。さあ、太陽に向かって飛び立て。さすればお前は神の元へ導かれる』
試練、神、八咫烏。矢継ぎ早に絵空事のような情報がなだれ込む。
しかし、僕の答えは決まっていた。
「断る」
『……何?』
「僕はまだ人間だ。このまま人間らしく、ここで命尽きるまで人間をやらせてもらうよ」
『お前はもう死なない。神々に選ばれた時点で不老不死になっている』
そこまで人間じゃなくなってしまったのか。
「……同じことさ。今まで通り俗世から離れて暮らし、十分生きたと判断したら大人しく海の底にでも沈んでるよ」
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