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「お、親父……か?」
不意に、背後からカラスの鳴き声がした。が、何故か僕の頭は毎日聞く声に変換した。
振り向くと、そこに居たのは僕と同じカラス。
「その声……。もしや長慈か?」
そう返事をしたつもりだったが、僕の口からも情けなく『カァー』と発せられた。
「やっぱり親父か! なんてこった! 親父もカラスになっちまってるなんて!」
と、目の前のカラスはギャーギャー喚いた。
まさか親子揃ってカラスになってるとは。ますます不可思議な夢だ。
「なあ! これって夢だよな? これが現実ってありえないよな?」
「夢だとしても、目が覚めるまでカラスとして過ごすしかないよ」
「は、はは……。夢の中でも冷静だな。ま、だよな。そのうち目が覚めるよな」
ふと、何やら外が騒がしいことに気付いた。
カラスだ。カラスの鳴き声が聞こえる。
「なあ。なんか呼んでないか?」
「そうだね。外に出てみよう」
「でもよ、この体じゃ玄関の扉は開けられないぜ?」
「やむ終えない。不本意だが障子を突き破って出よう」
「だな。襖を突き破って出るよりは楽だな」
まさか、自室から出る時そうしたのか? まあ緊急事態だし咎めるつもりはないけど。
嘴で障子に穴を空け、僕と長慈は外に出た。
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