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食べることの喜びを知った人たちの意欲はすごい物で、がんばろうという気持ちが芽生えてきたんだ。
「マジか、これから油が取れるのか?」
黄色い花が咲く春の草で、チーは菜の花といいました。はながつぼみのうち上のほう十センチぐらい切って湯がいて酢味噌に合える。ほろ苦くて大人は喜んだけど、子供はちょっとかもな、でも少し食べるだけならいいかな。
十センチ、これもチーが残したもの、物差しというのはキリクが竹で作った長さを測るもの、温度も時間もそうだけど、変なものがチーの部屋にはまだたくさんあるんだよな。
長老は各村長へ手紙を書き、税金の差し止め、そして、秋の収穫までの一年で、滞納していた税金を十二回に分け、次の年までに上乗せして払うという、分割での税金を納めるようにおふれを出したんです。
家を持っている人は喜んで帰って行きました。
村長達は渋い顔をしていましたが、空き家にしていてもしょうがないので返せと命令です。
それでも、新しい人が入ってしまったりしたところはしょうがありません。
チーは、空き家や、空いている土地の調査も同時に始め、そこへ人が住める集合住宅というものを作り始めていたんだ。
それは雪まつりの時に来る人に貸すのが目的だったんだけど、地元にいる人の方が大事とか言っていたな。
大工たちも困窮していた、だから木を切らせろと言ってきてさ。
でもチーはそれも止めた。
木は、育つまでに時間がかかる事、そして寒ければ燃やしたい人が多く出てくる、だから、木は最小限にしてほしいと。
大変だけど、石やレンガの家の方がいいんだと言って小さな体を曲げ頭を下げていた。
でも、案外早くできたのには驚いた、石でできた空き家があって、それにチーは、ああしろこうしろと指示をしたら、四つの家族が入れる家を作っちまった。
そんなので、あっという間に、教会の前から人が消えていったんだ。
ある時、森の木が切られているという報告が入って、チーはその人たちを捕まえろと言った。
ジャルが言う。また、あの時の様な険しい顔。
怖い顔は大人を睨みつけていたそうだ。
長老の屋敷の前で、ぐるぐる巻きにされた人たちが並ぶ。
俺たちもそれを見ていた。
何のために木を切ったと聞くと、寒いから燃やすという。
チーは嘘だと言った。
なぜ?
木はすぐには燃えないのだという。
一年乾かさないといけないはずだという。
ああ、そうだ、木を切ったのを細かくして、積み上げ、古い物から使う。
それにやみくもに切るのもダメだ、ちゃんと見計らって、細いのや、日を妨げているのから切って行かないといけないという。
それを聞いた大人たちはうん、うんと頷いていたんだ。
この人たちは悪い事をしようとしているという。
どうして?
本当に兵士たちが来たもんだから、その人たちは謝り始めたんだ。
態度を変えたというのだ。
おかしい、そう言ったチーは、走り始めた。俺たちが止めるのも聞かず。そして一人の人にこういった。
「誰に頼まれた?言えっ!」てね。
すると教会に頼まれたというんだ。
それは絶対にない。
だって教会で燃やすのは子供たちが集めた小枝や、ごみ、寄付で賄っているから、そんな事はないのだ。
「切った木は、どこへ持ってこいと言われた?」
何処だ?という人たちが一人の男をみました。
父ちゃんがその男の胸ぐらをつかみました。
「誰に指示された?」
「し、知らない」
知らない訳があるかとねじり上げます。
「か、金貸しのミルコ」
「長老」
「ミルコがまたどうして?」
どうなさいますか?
捕まえろ。
はっ!
そう言って、出ていく兵士たち。
長老の前で何もかも自白した人たちも連れていかれることになりました。
さてとあごを擦る長老に一人の男性がこう言ったんだ。
「あ、あのー?」
夏まで、燃やす物を何とかしようと言われ来た、本当に寒くてという。
「よし、じゃあ今からすぐにでも使えるもの、それと、オッチャン達には、もっといい物を作ってもらう」
「おい、チー」
「いいじゃん、チョー、この間の炭焼き、この人たち借りてもいい?」
兵士の取り調べが終わってからならいいといわれ、男たちは終わったら、長老の家に戻ってくるようにチーが言ったのです。
俺たち兄弟が、チーのお目付け役です。
木を切りに入った男達には、背負いかごが渡され、そこには麻袋が入っています。
森の中へ入ってきました。まだ雪が残っています。
チーは、あるものを手にします。
「今から、これを集めてください」
それは、松ぼっくり、それと松の木や松葉。
「どうすんだよ?」
「あれ、知らないの?これよく燃えるんだよ」
濡れていてもいい、乾かせばいいだけだから、袋にいっぱい詰めてくれというのだ。
折れている木の枝は背負子にさしていく。
そして男たちを連れ、森の奥へ。
あれ?ここは?
空を仰ぎ見ると、チーが住んでいた山が見えます、だいぶそばまできたな。
「来て!」
呼んでいるチー。
「なんだ?洞穴か?」
そうだという、魔物がすんでいたかもしれないけど、今はもう使われていない穴だそうだ。
俺たちにここへ入れという。
真っ暗だよ。
するとチーは松ぼっくりを木の先にさして火をつけた。
「うわー」
「明るいなー」
「でしょう、見て、奥は深くないから」
何だこれ?びっしりと木が並んでいます。
「これ、どうするんだ?」来る途中に、木がいっぱい転がっていたのわかった?
ああ、見てきた。
「木をここに入れて火をつけて燃やしてほしいんだ」
は?
「炭を作ります」
「炭?」
「うん、木を燃やすよりあったかいよー」
とニタニタ笑うチー、気持ち悪い。
これを燃やすのか?
何だ簡単だという男たち。
チーは首を振ります。
「蒸し焼きにするんだ」
「木を蒸すのか?」
うんと言うチーです。
とにかくできた物を見せますという。
それを見た。
「あれ?これ」
黒い木です。
「これ、テーブルで火を起こした奴だ」
「焼き肉した時の、へー炭って言うのか」
そう、兄ちゃんたちは知っているのだ。チーにせかされもっと小さな穴で作った。俺は喰うのに精いっぱいで覚えてなかったけどな。
ただこれで文字を書いたのは覚えている。
最初、火がつくまで時間はかかるけど、一回つくと結構長持ちするからね。
これは有毒なガスが出るから、十分喚起、暖炉は空気が回るから煙突のあるのは大丈夫だという。
チーはそばに空いているくぼみに炭を入れ火をつけた。
火が回り、赤くなってきた。
「こりゃ、たったこれだけでこんなに熱いのか?」
そうなんです、だから、煮炊きが出来るんです。
へー、という大人達。
毎日ここへ来て、この穴に隙間なく木をびっしり入れてほしい。
その間は、松の木や、落ちている木でしのいでほしい。
おう、わかった。
火入れは難しいから、できたら教えてくれと言う。
「ちびすけ、お前がするのか?」
「うん、まかちとけ」
大丈夫か?と笑われていました。
大きな穴は木でいっぱいになると入り口に蓋をするように木を重ねていき、泥で空気が入らないように蓋をした。
煙を出すための煙突は一番奥から穴の上の方に空いた穴。今はふさがっているが火を入れたらそこを開けると黙々と煙が出てきた。後はこの煙が白くなるまでほおっておいて、また埋める。男たちは、炭を完成させ、そのそばの穴で、もやしを作り始めたんだ、そんなこともあったなー。
そう、そう、ミルコって男はつかまった、それもチーが寝ている間に。
で、その男は、教会は教会でも、俺の知らない教会の名前を言って来たんだ。
「アルリア教?なんだそれ?」
父ちゃんの話だと、貴族たちや王様たち、お金持ちに言い寄ってくる、蛆虫みたいな教団だって。知っているのか、父ちゃんはそんな奴らにかかわるなと言っていたんだ。
それとこんなことがあった。
長老のところに集まった村長たちの一人がやらかした。まあそれを聞いてチーの言っていたことが本当になったと驚いたんだけどな。
その村長の話だ。
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