第31話 王都からの手紙

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第31話 王都からの手紙

チーが眠りについたことは内緒ですが、それでも多くの人が家に来るわけで、隠すのも大変になってきた。そんなある日。 いつものように家に来た手紙をクエルが見ながら部屋に持ってきた。 その多さは広げるだけでも大変だ。 「おじ様からだわ」 長老に渡すと、眉間にしわを寄せました。 「メルー、ガブを呼んできてくれ」 「うん」 俺は父ちゃんを呼びに行きます。 チーがいないだけで静かな屋敷の中、大声で父ちゃんを呼ぶチー。俺も呼んだら目を覚ますだろうか? 「父ちゃんどこ!」 階段の上から下に向かい呼んでみた。 「ガブさんなら外、キリカさんのところかも」 姉ちゃんありがとうと階段の手すりにまたがり下へと降りた。 「父ちゃんいる!」 おう、なんだという声に長老が呼んでいるというと、働いている人に声をかけて出てきた。 「何かあったか?」 クエルのおじ、王都にいる、ウィリアムおじさんから手紙が来た話をした。 俺は母ちゃんを手伝ってこようかと話すと、長老は何か言っていたかというから、何もないというと、一緒に行こうと背中を押された。 部屋に入ると、チーがライオンさんというドゥラルもいた。 兄ちゃんが手招きしたのは、ドアの奥にある応接室、ドアを開けたまま、ここにいろという。 「王子がやらかしおった」 何のことだろうか? 手紙を回して読む大人たち。 「王が止めたのに兵を動かしたのか」 「馬鹿な」 ため息が聞こえる。 「メルー、魔物が出たらどうすればよい?」 長老に聞かれた。 「えーと、まずは大人に話す」 「そうだ、だがその大人、両親や知り合いがそれを怠ったら何が起きると思う?」 「魔物の被害にあう、かなー」 「その通りだ」 それがどうしたの?とアイジュ兄に聞くが首を振る。 王都の北側、グレコ国と接するあたりに魔物が出た。王はほっとけといったが、王子は王が動かないのならと兵を引っ張り出した。 魔物は現れなかったが北の国境入り口門、そこには大勢の人が、この国へ入れろと小競り合いが起きていたのだ。 王子は、この国へ誰一人いれるなとお触れを出し、国へ誰も入れないようにして、やり切った顔で帰ってきたという。 「馬鹿か?」アイジュ兄が小さな声で言う。 なんでだよと聞くと、魔物が出ていたんだろ?襲われたくないから逃げてきたとか考えないか? ああ。 普通、逃げろと中へ入れるだろうが。 でも魔物はいなかったんだろう? 「国境のこっち側にはな」 「調べなかったの?」 「向こう側はグレコ、そっちは知らんだとよ」 はー? 「な?だから馬鹿なんだ」 「あのお方は何をお考えなのか?」 そういった長老が、顔を動かすと俺と目が合った。 「子供たちもおる、いい機会じゃ話しておくか」 「いいのでしょうか?」 「隠してはおけんだろう」 まだ噂の段階でしかないのだが、五大国の一つがほかの国へ戦争を仕掛けようとしているという。 「どこなんですか!」 アイジュ兄の大きな声にびっくりした。 まあ、まあという長老。 「おかしいですね、まさか、王様がここへ来たのは食料の打診ですか?」 長老は首を振った。 さほど買い物をした様子はなかったなと父ちゃんです。 おかしいですねというドゥラル。 俺はどうしてと尋ねた。 「戦争はなそれなりの物資が必要になる、人だけいてもどうにもならないんだ」 「それとだ、戦争が起きるかもしれないというのをわかっていて王子は兵士たちを連れて行った、さて何かが起きたらどうする?」 「ああ、そういうことか、必要な兵士が動かせなくなる」 「そういうこと、たまたま、大したことがなかったがな」 馬鹿といったのがわかった。 「やらかし王子だな」 くくくと兄貴が笑った。 なんだよー。 お前がよく言うよと言って笑っている。 王子の話はそれだけ、ただ王妃の動きもおかしいそうだ。 何がおかしいの? わからないという兄貴。 「わかい男に目がくらんでいるのか、わかっておればいいが」 「王妃の父親の動きも気になりますね」 「アルリア教が王都に入り込んで建物を立てていたのか、知らなかった」 「ウィリアム伯が、気が付かなかったのに知るわけがない」 長老は、手紙をめくりました。 「おや、これは」 なんだろう? 「アイジュ、メルー、オールトの王子と王女からじゃな、チサにか、ほほほ、これはよい」 読んでは微笑んでいる。 「ガブよ」 「はい」 チサが目が覚めたら、オールトへ行ってもいいだろうか? 「チサですか?」 「そうじゃな、子供たち、アイジュ、メルー、お前たち、チサが目が覚めたら、オールト国へ行くように仕向けてはくれまいか?」 は? クエルがその手紙を持ってきました。 「読んでみて」 そこには、約束していたのに来ない手紙を待っている彼ら。オールトの海を見に行くと言っていた約束を果たすように書かれていた。 「海?」 「まさか、教会の子たちと約束していたのはこれ?」 「教会の子だって?駄目だ、ダメ!」 「なぜじゃ、かまわないではないか、大きな子たちも連れて行けば」 「ですが、魔物が」 すると手紙の束から、一つを取り出し、父さんに差し出しました。 「は?嘘ですよね」 「ボブ、読んでくれ」 父ちゃんが渡したのを読み始めます。 それは、チーの親が死んだ場所。 アシッタル村の村長からです。 ワイバーン騒ぎが起こる二か月前、子供たちが行ってはいけない森へ出かけていた物たちがいた。 彼らはキノコを採りに入ったのだがそこであるものを見た。 ワイバーンが人を食べていたというのだ。なぜ今になってこんな話が出たのかというと、子供たちは怒られるのが嫌で黙っていたのだ。 だがそれも黙っていれば表に出ることはなかったのだが、家の補修をする中で、ある建物にいた人が消えたという。 さほど人付き合いのない家族。ただ家族なのかどうかも怪しくなってきたという。 届はしてある。 五人家族。 だがその人物像は隣に住んでいるものでもあやふやで、いつもフードかぶった人たちが出入りをしていたという。 その人を知っているという子供たち。 五人どころか、もっといるということを話し始めた。 そしてその人たちが大きな穴を掘り、そこへ人を埋めて、アイバーンに食わせていたというのだ。 「うそ!」 「そんなことが!」 俺はドキドキしながら話を聞いていた。 大人たちは、その場所へ向かったところ、土で埋めてある場所を発見、そこからおびただしい人骨が出てきたという。 「子供たちに詰め寄ると、“アルリアしんのため”という言葉と“ごきょうしゅさまばんざい”という言葉を聞いている、そして、アイバーンに向かい、“わが神代心行くまで腹を満たすがいい”と言っていたと」 言葉を飲み込んだボブ。 「アルリア……」 父ちゃんはこぶしを握っていた。 アイバーンを倒した後は、大型魔物は一度も出てこないという。 「ですが!」 「俺行きます、チーをこいつらを守る」 「お、俺も!しっかり見てくる」 「そうじゃ、今、どんなことが起きているかしっかり見てきてくれ」 兄ちゃん時間! ジャルの声がした。おいらたちはここまで、父ちゃんたちはむつかしい顔をしていた。
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