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もちろん教会の関係者の人たちも入れ代わり立ち代わり来てくださった。 枢機卿様や司教様たちも来てくださって、恐縮した。とチーは言っていた。俺が書いている物を見てチーは、ありがとう、と言い、寝ている間の事を聞くのだった。 長老の部屋に、教会関係者が入っていった。 「メルー、悪いがお茶を頼めるか?」 父ちゃんに頼まれ、お茶を持って行った。 ドアを開けると、難しそうな顔をしている大人たち。 父ちゃんに渡すと、部屋から出された。 「それで?」 「はい、なんでも薬になるので、買い取ると言われておりまして」 「薬ですか?」 「私も半信半疑なもので、どうしたらよいかと」 「とってあるのですか?」 メイドが、きれいで捨てるのがもったいないと集めていたというのだ。 何の話しだろう? オトメさんが言うのなら間違いはないだろうが、何に効くのかぐらいは聞いてもいいのではないのか? 薬屋のばあさん? 「メルー、どうした?」 アイジュ兄。なんでもないとそこを離れた。 まあいいか、後で聞いてみよう。 やばいやばい、ミルクジャムを作ろうとして、火に掛けっぱなしだったミルク。 走っていくと、壁に手をつきながら歩くチーの姿。 「又ベッドから出て、起こられるぞ」 「わかってる、なんだか焦げ臭いからサー」 うわー! 飛び込んだ台所。 セーフ。 まだぶくぶくしていて、ここで火からおろせば、チーの好きなもの……。 「ウワー、色、色がー!」 どうしたの? 鍋を見るチーは、自分が使っていた椅子をいつの間にか俺の隣へと持ってきていた。 「茶色」 「アー、失敗」 「メルー、これ失敗じゃない、お砂糖は入れた?」 「え?うん」 「じゃあもう少し火に掛けて、弱火で、焦がさないように、色はもう少し濃くなるけどかき混ぜて、とにかくまじぇろ!」いつものチーの言葉に、うん!といいながら木べらで混ぜた。 んー、重い。 「よし、どれどれ?」 チーはオーブンに入れる板を持ってきた。 油が薄く塗ってある。 ここへ入れろといいます。 入れるのはいいけど。 早くしないと固まるといいました。 どろりとしたものはすぐに固まっていくみたいです。 「このまま冷めるまでおいて、冷めたら切ろう」 「これはなんだ?」 「キャラメル、べっこう飴みたいに口に入れるんだ、こうしちゃいられない、メルー油紙あるかな?」 う、うん。なんかできちゃった。あははは。 冷蔵庫を開けると布袋が入っていた。 「この袋はなんだい?」 俺はそれを母ちゃんに話した。 「暑くて溶けるからここへ入れたんだね」 「うん、だめ?かな?」 「失敗作がねー、又小さく油紙を切ったもんだね、どれ」 口にひとつ入れた母ちゃん。 目が真ん丸くなった。 一度にいっぱい食べちゃだめ、一日一個を言い渡され、大人たちにおいしすぎるから気をつけろといった母ちゃんだった。 失敗したものがおいしいなんてな。 キャラメルや果汁を入れた飴はこの後、教会で作られ、売りに出されるんだ。この街のお土産品としてね。 三日後の夜、やっとみんなと一緒に食事をした。四日目になってやっとおかゆから解放され、目の前には純和食が並んだ。 オー、冷ややっこ! みんなにもお豆腐です、おかかにネギ、最高です。 「チーの好きな鮭の塩焼きだ」 うはっ、めちゃ、ザ、和食卓。 そして。そこにはきれいな白い箸、うれしかったー。 「うわー箸だ、ありがとうキリカさん」 ビーバーさんが頭をかいている。 「ありがと、ママさん、いただきます!」 ママさんは、壁をぶち抜いた向こう側で笑っている。 んー、おいしい。 わかめと玉ねぎの味噌汁、みじん切りのたくあん漬け、美味しいよー。 「さて、みんな揃ったところで話がある」 みんなが長老の方に耳を傾けた。 「チサ、オールトの王族の方々を覚えているか?」 ん? ほら、馬車を助けてやったろ? 春に山菜取りに行った人たちだよ。 あー、なんとなくだけど覚えてる。 「彼らが、体が落ち着いたら是非にお越しくださいという手紙が来たんだ」とおお兄ちゃん。 私? そうだという。 「海に行きたいんじゃないのか?」といったのはメルーだ。 あー!そう!約束した。 教会の子供たちも首を長くして待っていると聞く、どうだ、行ってみるか? 行く!行きたい! わかったという長老だった。 あー、その前に準備だなー。とつぶやくと、そうだな、片道四日、往復でも10日見なければいけない。どこかに泊まらなくては。 「いいよ、キャンプで」 「キャンプとは何だ?」というのはパパさん。 ア~えーっと、野宿? 馬鹿な、魔物に襲われたらどうするんだ! あれ?魔物って、食べるんだよね? 「まあそうだが、それにしてもだな」 大丈夫だよ。 何故そう言い切れる? へへへ、やってみたいことがあるんだ。 手紙を書く、だめだ、まだかけない。 おお兄ちゃんに頼みに行こう。 「なんて書くんだ?」 「えーと、拝啓」 「は?いけい?」 なんて書いたらいいのー、王子様だよねー。 「お手紙ありがとうございましたからでいいんじゃないか?」 うん、それでいい。手紙を出せなかったことを素直に書いてほしいとそれと夏の終わりごろ尋ねますと書いてほしいと頼みました。 頼みに行くのはニャーゴさんのところ、ママさんにお願いしちゃった。 あ。 出してから気が付いた。 クラゲ、やばくね? 長老に、眠っていた間のことを聞きました。 眠りに入ったのは、五月五日の満月の日だったそうです。 そして起きたのは、七月十日二か月もの間眠っていたのです。 身体のどこが痛いとかということはありません、ママさんたちが下の世話をしてくれたそうですが途中から何も出なくなって心配したそうです。 それからだそうです、体の周りにうっすらと膜のようなものが張り付いてきたと思ったら体を包んでいってしまったようで、私、繭になったみたい。 それでもニーニ達は見てくれて、声をかけてくれたみたい。 感謝です。 無事で何よりじゃ、これからはあまり無理するでないぞ。 「はい」 「おや?」 「おー、言葉がきれいだ」自分に驚いた。 「ハハハ、よかった、これで皆難解な言葉を解読しなくて済むわ」 ハハハ、と笑われましたが、心配してもらったのは確かで、これからは爺ちゃんと呼んでもいか尋ねると、かまわないと言ってもらった。
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