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身体中がズキズキと痛み悲鳴をあげている ここは……? 目が覚めると、柔らかなベッドの上で寝ていた。 そうだわ、確か落ちたのだった 「気がついたか?」 耳障りの良い穏やかな声が聞こえる。 自分に向けられた声なのかと思い、ゆっくりと声のした方向へと顔を動かす。 「痛っ…」 首を少し動かしただけなのに、まるで電流が流れたような感覚が走る。 「痛むのか?」 声と共に、遠慮がちに触る手の温もりを顔に感じた。 大きな手が私の頬を優しく撫でてくれる。 その手に触れられるだけで、痛みがスーッと波が引くように消えていった。 優しい手の主は気遣わしげな表情で見つめてくる。 流れるようにサラサラとした漆黒の長い髪を、ゆるく一つに束ねた若い男性━━師長様と同じようなローブを身に纏っており、長いまつ毛に黒曜石のような瞳が印象的だ。 (かっこいい……) 思わず心の声が漏れる所だった。 心臓が早鐘を打っている ばちっと目があった瞬間に、心を鷲掴みにされたようだった。 直視できないほどに綺麗な男性だったというのもある。けれど、単にその理由だけではなくて、自分でもよく分からない妙に落ち着かない感情が溢れてくる。 自分の感情も、今の状況も、全てが整理できずに言葉に詰まっていた。 「声がでないのか? まだ痛むだろうが、じきに治まる」 『は……い……』 やっとのことで絞り出せたのは、肯定の返事のみだった。 「話せるのだな。巻き込んですまなかった」 男性はベッドの傍にある椅子に腰掛けたまま、深々と頭を下げる。 私は、何かに巻き込まれたのだろうか。
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