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「おはようございます」 「本日のお召し物はいかがなさいますか?」  「サヤカ様?」 「おはようございます。あの…お任せします。」 今までにないくらいにぐっすりと眠れた気がする。 広い部屋にふかふかのベッド。 出勤時間を気にする必要もなくストレスフリーの夜だった。 目が覚めると絶妙のタイミングで侍女さん達が現れる。 まるでお姫様のようにいたれりつくせりで世話をしてくれる。 最初は抵抗があったものの、慣れとは恐ろしいもので、豪華な衣食住の生活に浸りつつあった。 当初は部屋を抜け出せないかと機会を窺っていたけれど、部屋の前には常に誰かがいて早々に諦めた。 ずっと緊張していたけれど、悪意を感じることもなく命の危険はなさそうだったので、とりあえずお世話になることにした。 無断欠勤で派遣の打ち切りをされるかもしれない。 その時は、自分もこの大掛かりな劇場型の宗教なのかグループなのか、ここの一員として雇ってもらえないか交渉しよう。 そんなふうに思ってしまうほどに居心地が良かった。 何もすることなくいつのまにか数日が過ぎていた。 さすがに何もすることがないのもつらい。
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