1

1/6

35人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ

1

「お疲れ様です。お先に失礼しまーす。」 倉持さやかはその日の業務を終えて、いそいそと自宅への帰路についた。 中小企業の事務員として、この会社に派遣されてそろそろ1年が経つ。 ある程度の業務にも慣れてきて、心にも余裕が持てるようになってきた。 おまけに今日は金曜日。 嬉しさのあまりに足取りも軽く、鼻歌を口ずさんでいた。 鞄からスマホを取り出して時間を確認する。 「よし、この調子ならいつもより早い電車に乗れる。ラッキ~」 ラッシュ時間ではないから座れるかもしれない。 今日は思いっきり夜更かしできるから、一刻も早くログインしたい。 追加コンテンツをダウンロードしちゃおうかな。フリーWi-Fiつながるかな。 今日からイベントだし、課金額もどうしよう。 限度額を決めていないと、ついつい課金してしまうからなぁ。 ううん、この際、推しが出るまで無制限に!  この為に仕事を頑張ってるんだから。 さやかの頭の中は、今ハマっているゲームのことでいっぱいだった。 駅のホームに辿り着いたこともあり、気が緩んでいたのだろう。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加