35人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
1
「お疲れ様です。お先に失礼しまーす。」
倉持さやかはその日の業務を終えて、いそいそと自宅への帰路についた。
中小企業の事務員として、この会社に派遣されてそろそろ1年が経つ。
ある程度の業務にも慣れてきて、心にも余裕が持てるようになってきた。
おまけに今日は金曜日。
嬉しさのあまりに足取りも軽く、鼻歌を口ずさんでいた。
鞄からスマホを取り出して時間を確認する。
「よし、この調子ならいつもより早い電車に乗れる。ラッキ~」
ラッシュ時間ではないから座れるかもしれない。
今日は思いっきり夜更かしできるから、一刻も早くログインしたい。
追加コンテンツをダウンロードしちゃおうかな。フリーWi-Fiつながるかな。
今日からイベントだし、課金額もどうしよう。
限度額を決めていないと、ついつい課金してしまうからなぁ。
ううん、この際、推しが出るまで無制限に!
この為に仕事を頑張ってるんだから。
さやかの頭の中は、今ハマっているゲームのことでいっぱいだった。
駅のホームに辿り着いたこともあり、気が緩んでいたのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!