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「な、なっ」
「ん?早く治るおまじないだよ」
「お、まじな」
「クスッ。じゃあ俺はそろそろ仕事に戻るね」
「えっ?あ、そ、そうですよね……」
咄嗟に
出てしまった寂しさの声。
自分でも
驚くくらいに
柊二さんに
もう少しいてほしいと思い
意識とは裏腹に無意識に声となり出ていた。
「薬、ないんだろ?俺、今から外に用事あるから帰りに薬を買ってくるよ。だから、そんな寂しそうな顔しないで?俺だって、ひよの傍にいたいけど、ごめんね?」
私の身体を
ギュッと抱きしめ
多分私以上に名残惜しそうな
表情を浮かべ私の唇をつぅぅっと撫で
「望月」
「は、はい」
「このことは、ふたりだけの秘密な?」
「っ」
去り際に
会社モードで
私へとそう言い残し
柊二さんは医務室を後にした。
「ふ、不意打ちすぎる……」
完全に
柊二さんに
骨抜きにされた私は
お腹の痛みも忘れただただ彼が私に残した
ぬくもりと声を身体に感じながらそっと目を閉じた。
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