やっぱ、そうなるよな。なんかわかってた。

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やっぱ、そうなるよな。なんかわかってた。

  「こんな、とこで……やめ……」    大学構内の狭い通路で俺は壁にもたれてガクガクしていた。    パチンッ    高峰が右の口角をくっと上げて指を鳴らす。完全に油断してた俺は条件反射のごとく催眠状態に落ちていた。  もう高峰には何度も催眠をかけられていて、俺は高峰の声と合図さえあれば丁寧な誘導がなくてもすぐにかかっちまうようになっていたから。でもさすがにこんな外でかけられるなんて思ってなかった。   「だから、前も言っただろ? 催眠は本人が本当に望んでないことまでやらせることはできないって」 「でもっ……ふぁ……」 「こんなとこでイッちゃうの? 恥ずかしいなぁ」 「だか、ら……やめろって……」    パチンッ   「あうっ」    カウントダウンは省略されてるのに完全に支配された俺の脳みそは高峰の合図で勝手にイッちまう。チカチカと火花が散ってるみたいだ。  二人きりでいるときなら身を委ねられるけど、さすがに大学っていう知り合いが多いところは怖い。   「高、峰……あとに、しろって」 「そうだね。こんな可愛い状態見せられないよね。このあと家来るだろ?」 「むしろ……放置したら、許さねぇ」 「じゃあ、解除してあげるよ」    完全に高峰のペースで翻弄されてる。どうしようもない。  でも嫌じゃないんだよなぁ……。俺が心のどこかでこの状況を楽しんでいて高峰に言葉でいろいろされたいって思っちゃってる。    高峰がカウントしてパチンッと指を鳴らすと、俺の敏感な状態は波が引くように収まっていった。ほっと安心した瞬間にいつもつるんでるうちの一人が通りかかる。   「あれ? ナオキまだいたんだ?」 「お、おー。そこで高峰に会って……」 「お前ら意外と気が合うんだな。うお、やべ。バイト遅刻する。じゃーな」    解除ギリセーフじゃねぇかって高峰を睨むけど、そんなのどこ吹く風な顔してる。    このところずっと一緒にいるもんだからグループのやつらも高峰に話しかけるようになったけど、コイツ意外と他人のあしらい方が上手い。嫌な気分にさせないようにしつつも中に踏み込ませないっていうか。だから、俺と最初にあんな風に話してくれたことが不思議だ。  お陰で仲良く? なったんだけどな。   「あぶねーだろうが」 「大丈夫だよ。お前、俺の声にしか反応しないし」    悔しい。  けど言い返せない……未だに俺は販売されてる他の音声じゃ一切催眠かからないんだから。でも、高峰の声じゃなきゃ反応しないことと、反応しちゃってる状態を他人に見られるのはわけが違うだろ?  
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