地獄でまた会いましょう。

2/2
前へ
/9ページ
次へ
わたしは怪物、いや悪魔の条件を承諾し、 魂の抜けた羽音の身体にわたしの 魂を入れてもらった。 羽音として目覚めたとき、 わたしの復讐劇が始まったのだ。 行方不明だった姉が帰ってきて喜ぶあなたを見て 思わず笑いそうになってしまった。 本当の姉はもう死んでいるというのに ぬか喜びする美音は滑稽だった。 そして、わたしは悪魔から貸された 魔力を使って美音の人生に起こる 幸福な出来事を3分の1に減らした。 なぜ、全部減らさなかったのか? だって、少しは幸せな出来事がないと 打ちのめしようがないでしょ? 頂点の幸せから 不幸のどん底に堕ちてほしかったの。 そして、わたしは優しい姉のフリをして あなたに不倫現場を見せてあげたの。 あなたが勝手に行動したおかげで予定よりか 早くなってしまったけど。 でも、あなたは心のどこかで これは夢だと思っていた。 だからあなたのために復讐するフリもして アイツらの愚行を暴いたのよ。 気づいたでしょ?これは夢じゃないって。 夫と不倫相手が隣同士に座っているのを見て 人生のどん底を味わったでしょ? ありがとう、面白い物語をプレゼントしてくれて。 「ざまぁみろ」 美音はスカートの裾を握りしめて歯を食いしばった。 「……謝るから。全部謝るから、だから、許して」 わたしを見るその瞳は恐怖を滲ませている。 「いいえ。許さないわ」 冷たく言い放ちテーブルに並べてある ナイフを握りしめてわたしは美音の 身体に向かって突進していった。 ナイフの刃が美音の腹に沈み込み、彼女の顔は 苦しみに歪んだ。 「どうして、どうしてなの? お姉ちゃん」 わたしをまだ姉と思っているのだろうか。 ほんとにバカな女。 わたしは彼女に突き刺さった刃を抜く。 血が噴き出し、わたしの服を赤く濡らした。 「ふふふふっ! あー面白かった!」 倒れた美音をよそにわたしは笑う。 会場の時は止まったまま。 いずれ悪魔がわたしの魂を奪いにくる。 わたしが死んだら、魔法の効力は切れるから 大丈夫だろう。 「どうして、ですって? さっきも言ったでしょ? あんたに復讐したかったからよ。 あんたの絶望の顔を見れて 楽しかったわ。ありがとう、美音。 あぁ、もう聞こえてないわね。 死んでるんですもの。」 笑いが止まらない。 「復讐は終わったようだな。」 くぐもった男の声とともに悪魔が姿を現す。 「ええ。終わったわ」 「では、お前の魂をいただくとしようか 面白いものを見れて楽しかったよ。」 悪魔が何かを握り潰すかのような仕草をする。 「あ、ぁぁぁっ!!!!」 心臓を潰されたかのような激しい痛みがして わたしは吐血し、地面に座り込んだ。 ふふふ。 妹が死ぬ横で姉が死ぬなんて。 肩で息をしながらも笑いが込み上げる。 景色がぼやけて頭がガンガンする。 感覚が消えていく。 「さようなら、羽音の身体」 わたしはにっこり笑って瞳を閉じた。 ねぇ美音、きっとあなたは地獄にいるでしょう? ならわたしもきっと地獄行きよね。 あぁ、楽しみでたまらないわ。 あなたの体が引き裂かれたり 煮たり、焼かれたりするのを見られるなんて。 地獄でまた会いましょう。 (終わり)
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加