復讐の始まり

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復讐の始まり

わたしは本宮(もとみや)羽音(はおん)。 県立図書館で司書をしている。 司書の仕事はなかなか大変だ。 主な仕事は書庫の整理や本の貸し借りだが、 本の題名を忘れてしまったが、 こんな本を探しているという人も多く その人が言ったキーワードだけで 蔵書検索や図書館員ネットワークでその本を探し出さなければならないからだ。 ちなみにこれはレファレンスという。 疲れるけれど、わたしにはこの仕事が性に合うようで 苦に感じることはなかった。 「本宮さん、お疲れさま。 あとはわたしが引き受けておくから帰っていいわよ」 絵本コーナーで本の整理をしていると 先輩の司書、北野さんが声を掛けてきた。 「北野さん、お疲れさまです。 でも、おすすめコーナーの飾り付けもまだですし…」 「いいの、いいの、あたしがやっておくから! 本宮さんいつも頑張ってるでしょ? もう9時過ぎてるし まだ若いんだから家に帰って寝ないと 肌に悪いわよ」 確かに苦にならないとはいえ、 さすがに疲れる 北野さんは気遣いの細やかな人だ。 新人だった頃も良くしてもらった。 「…ありがとうございます、北野さん。 では、お先に失礼しますね」 「ん。じゃ、また明日ね!」 わたしは黒いエプロンの紐を解き、 帰り支度を始める。 スマホを見ると1件通知が入っていた。 妹の美音(みおん)からのメッセージだ。 『お姉ちゃん、お仕事お疲れさま! 昨日は想夜(そうや)に誕プレありがとうね☆ 想夜も飛び跳ねて喜んでたよ!』 すぐに4歳の甥が機関車のおもちゃを手にして 嬉しそうにジャンプしている動画が送られてきた。 美音は高校時代に付き合っていた夫、 聡太との間に子供(想夜)ができ 高校3年の時に学生結婚した。 そこから、美音は専業主婦となり大企業の 御曹司である聡太の稼ぎで暮らしていた。 そして昨日想夜は4歳になったばかりだった。 甥のはしゃぎっぷりに笑みが溢れる。 プレゼントして良かった。 美音は今とても幸せそうだ。 聡太さんと美音が結婚して良かった。 そのときまでは、そう思っていた。
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