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「な、なんだ、これは?!」
司会が慌ててパソコンを操作するが画像は消えない。
会場はざわめく。
「な、なんなのっ、これ!!」
あの女、里佳は立ち上がり叫んだ。
聡太さんも呆然とスクリーンを見つめている。
社員は全員二人に注目して、
二人の周りを避けるように円ができた。
会長も動揺しているようだ。
わたしは内心ニヤリと笑い
テーブルクロスの下でスマホを操作し、
録音を再生する。
『ねぇ、聡太っ! いつ美音と別れてくれるのっ!』
ヒステリックな女性の声が会場に響きさらに
会場は騒がしくなる。
『うるさいなぁ、もう少ししたら美音に言うって!』
『だって、不安なんだもんっ!』
『大丈夫だよ、俺が1番愛しているのは里佳だから』
「い、いやぁぁぁぁぁぁっ!!」
里佳が耳をつんざくような悲鳴を上げて崩れ落ちた。
「違うの、みんな!!
あんたね? あんたがやったのね!!」
美音に血走った目を向ける。
「わ、わたしは何も知らないわ!!
それに事実じゃない!わたし見たものっ!
2人が裸で抱き合っているところ!!」
驚きの声があちこちから聞こえる。
ふふふ、楽しいわね。
「ち、違うと言っただろう美音?
これは誤解で…」
「近づかないで!!」
美音の迫力のある怒声に聡太さんは足を止めた。
「あんたなんか、死ねばいいのに!」
「いつだったか、
あなたはわたしにも同じことを言ったわね」
わたしが言った瞬間、騒いでいた人々の
声が聞こえなくなり、動きが止まる。
わたしと、美音以外。
「え? なに、これ…」
美音は目を見開いて周りを見渡す。
「これはね、わたしが使った魔法よ。
わたしたち以外の時を止めているの。
わたしが今から話すことは秘密にしたいから」
ふふふと優雅に笑うと美音は訝しげな
表情を浮かべた。
「何言ってるの? お姉ちゃん。
冗談はやめてよ。わたし聡太に浮気されて
すっごく辛いのよ!?」
「わたしはあなたにそのすっごく
辛いことをされたことがあるのよ!
あなたの悲しみよりもずっと上回る辛いことをね。
だから、わたしはあなたを打ちのめすためにずっと
準備してきたのよ」
ずっと演技してたけどもうやめるね、美音ちゃん
冷たく睨みつけると美音ちゃんは
青い顔をさらに真っ青にした。
「あなたは…誰?」
「わたしはアリス。
あなたに殺された斉木愛理須よ」
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