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ん?
「黒木、中川、ぽかんと口開けてどうしたんだ?」
2人して、こっち見て
中川なんか、さっきまで笑い転げてたのに
「いや…なんかもう…俺達帰るわ」
「は?何だよ急に」
「そうだな。俺達なんかが踏み込めない世界だったわ。悪かったな邪魔して」
「あ?何の話だ?母さん、きっと買い物だぞ?ゆっくりしてけってことは、なんか買って来るかもしんないし、ゆっくりしてけば?」
訳分かんねぇけど
2人して考える事は一緒か
ん?
蒼渚が、なんか俺の頭を見ている
「何?なんか髪に付いてる?」
パッパッと髪をほろうと
「莉玖、お前また最近ドライヤー使ってないな?」
「そりゃそうだ。片手こんなんなのに、ドライヤーなんて、わざわざかけるか」
「片手だってかけれるし、凪彩に言ったら、喜んでかけてくれるだろ?」
「いいよ、めんどい」
俺の髪を所々摘まんで、じ~っと見ていると
「どんどん傷んでくぞ?そして、禿げるぞ?」
「えっ?!禿げ…えっ?!」
禿げんの?!
チラっと黒木達を見ると
「俺も聞いた事あるな」
「えっ?!マジで?!」
「俺は、ちゃんと乾かしてるから~。あ、ちなみに愛葵のも乾かしてあげてるし~」
んな事、聞いてねぇし
「な?今日からまた、ちゃんとドライヤーかけろ」
「……分かった」
「もはや、恋人と言うより、兄と弟だな」
ん?
「ぶははっ!神谷、よく凪彩の兄ちゃんやってんな?」
「……え?俺?!弟じゃねぇし!俺は、れっきとした兄ちゃんで、蒼渚は、れっきとした弟だぞ?!」
「はいはい。すぐムキになるな、弟」
「弟じゃねぇし!」
たしかに、ずっと一人っ子だったけど
蒼渚なんか3人も姉ちゃん居るんだろ?
末っ子だろ?
「ただいま~。あ、皆まだ居た。一緒にお昼食べてってね~」
「「「は~い」」」
え?
帰るんじゃなかったんかい
いいけどさ
「うんまっ」
「間違いねぇな」
「俺、チャイチキ以外のハンバーガー食った事ないかも」
「俺も」
「なんかね~、急に食べたくなっちゃって」
母さんが、ラッピのハンバーガーを買って来てくれたので、皆で食べる
ラッパーピエロは、ピエロがラッパーもどきになってる絵が看板のハンバーガー店だ
他にもカレーやら、オムライスやら、色々あるが、とにかくこのチャイニーズチキンバーガーが旨い
ハンバーガーとラッパーとピエロに、どんな関係性があるのかは不明だ
「月川と神谷は、小学校からの付き合いなのか?」
「小学校…どうだったっけ?」
「小学校上がる前から知ってはいたが、ちゃんと付き合い始めたのは、小学校入る頃だ」
「神谷、記念日は大切にした方がいいぞ?」
「記念日?何の?」
「もちろん、莉玖と、蒼渚君のファーストキスの記念日よね~♪︎」
「「「………ええっ?!」」」
母さんが、ダイニングテーブルから、とんでもない事を言い出す
「かっ…神谷…月川と…」
「違っ…えっ?…はっ?」
「いや、なんで神谷も一緒になって驚いてんだよ?月川は驚いてねぇぞ?」
「え?」
ほんとだ
蒼渚…驚いてない様に見えるんじゃなく
驚いてない
「俺はちゃんと覚えてたからな。りっちゃんとのファーストキス」
「え~~~っ?!ほんとにしたの?!」
「マジか…」
「いや、それも驚きだが、そんな衝撃的な事を忘れている神谷に驚きだ」
え?
そうだよ
衝撃的過ぎんのに、なんで俺全然覚えてないの?
「莉玖ね~。テレビで見て知ったからって、蒼渚君にしちゃったはいいけど、全然意味分かってなかったのよね~。昔っから馬鹿な子だったわ~」
「馬鹿言うな!ガキなんだから、分かんなくたって、仕方ないだろ?!」
「しばらくしてね~…また蒼渚君にキスしようとするもんだから、教えてあげたのよ」
「いっ?!」
俺、どんだけ蒼渚にキスしようとしてんの?!
「そういうのは、友達じゃなくて、恋人同士がするものなのよ~って。そしたら莉玖、顔、真っ赤になっちゃってね。ごめんね、ごめんねって、何度も蒼渚君に謝ってたわ。ほんと、蒼渚君小さい頃から巻き込まれっばなしなのに、よく莉玖の傍に居てくれるわね~?感謝しかないわ」
「いえ。馬鹿な子ほど可愛いので」
「そう言ってもらえると助かるわ~」
「助かるなよ!自分の息子馬鹿にされてんだぞ!怒れよ!」
でも、待って
なんで、そんな記憶丸っとない訳?
母さんと蒼渚で、俺の事騙してんじゃねぇの?
「りっちゃん照れてんの、可愛いから」
あれ…?
あのフレーズ…
「蒼渚君が、許してあげるって言ったら、忘れよう?僕も忘れるから、忘れよう?って言ってたから、ほんとに丸っと忘れちゃったのね~?単純な子ね~?」
「…え?」
「まさか、ほんとに忘れられるとは思ってなかったよ。俺とのファーストキス」
「え?!そんな理由で俺、忘れてたの?!」
ってか
普通に女の子とのキスが、ファーストキスだと思ってたのに
蒼渚としてた!
俺のファーストキス返せ!
俺がしたんだけど
「ほんと、莉玖の頭ん中どうなってんだろなぁ」
「蒼渚…もしかしてさ、その時、俺照れてんの可愛いから…とか言った?」
「言ったよ?それは覚えてんの?」
「覚えてるってか、さっき、聞き覚えがあるなと思ったから…」
「ふ~ん?じゃ、沙弥姉との出会いも思い出した?」
「…は?沙弥姉?なんか関係あんの?」
「…ま、無理か。俺とのファーストキス忘れてるくらいだからな」
蒼渚とのファーストキス…
沙弥姉と出会ったのが、その辺ってことか
でも、全く蒼渚とのキスも思い出せない
無理だ
「じゃ、そろそろ帰るわ。なんか、色んなもんで腹いっぱい?胸いっぱい?」
「これからも2人の末永い幸せ、願ってっから」
「母さんに影響されんな、中川。俺と蒼渚は、健全なる幼馴染みで親友だ」
「そして、ファーストキスを済ませた仲だ」
「言うなよ!自分で墓穴掘って楽しいか?!」
「俺は楽しい」
「そうかよ!」
俺達が、そんな馬鹿な話をして騒いで
「んじゃな」
「おお」
皆が帰ると
楽しんで来たはずの凪彩が
冴えない顔をして帰って来た
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