映画

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いっぱい話聞こうと思ったら、少し話すと、さっさと部屋に行ってしまった 「なんか、あまり楽しくなかったのかな」 「疲れちゃったかな?」 母さんは、そう言ったけど… 疲れた… そうなのかな なんか違わない? ちゃぽん やっぱ…なんか変なんだよな ちょっとぼーっとしてる? 湯船に浸かって来た凪彩に声を掛けてみる 「凪彩…」 「うん…?」 「映画…あんま面白くなかった?」 「ううん…俺の知ってる場所も、幾つか出てきたし、面白かったよ」 「そっか?なんか…元気なくね?」 「俺…元気ない?」 「なんか、ぼーっとしてるって言うか…」 「そう……」 ほら、変だ 「映画じゃなくて、愛葵達と何かあった?」 「ううん…そうじゃないけど…ちょっと懐かしい物見たからかも」 「懐かしい物?」 「うん…映画の中に出てきた埠頭…」 「埠頭…懐かしいのか?」 「うん。凄く似てるって訳じゃないんだけど、あの感じが…よく行ってた場所に似てた」 「へぇ~…」 神奈川って言ってたもんな 横浜とかあるんだから、港町多いんだろな 「帰りたくなった?」 「……懐かしいけど…帰ってももう…誰も居ないから」 「……じゃあさ、こっちの埠頭、一緒に行こ」 「え?」 「同じじゃなくたってさ、似てる場所見たら、懐かしい事思い出したりとか、あるかもしんないじゃん?」 「……うん」 「思い出したら、忘れちゃうもの、減らせるだろ?」 「~~っ…うんっ…」 忘れたくないよな けど 全然違うとこ来ちゃって 一緒にその思い出話せる人居なくなっちゃって 絶対寂しいよな 「凪彩さ、嫌じゃなかったら、凪彩の母さんとか、ばあちゃんの話しろよ。話したら思い出すし、俺だって聞いたら、一緒に話せる事とか、あるかもしんないだろ?」 「…なんかっ…あんまり話さない方いいのかなって…思ってきたから…」 「なんでだよ?凪彩が、どんなとこで、どんな風に育ったのか、知りたいに決まってんだろ?」 「うんっ…莉玖にっ…色々聞いてもらいたい」 埠頭かぁ… そんなとこ、まさか行きたいなんて思わないからな 俺、自転車乗れないしなぁ 父さんか母さんに頼んでみよ 「お~…船デカっ…」 「埠頭なんて、久しぶりだなぁ」 翌日、すぐに父さんが連れて来てくれた 「莉玖が小さい頃は、何度か釣りに来たんだけどなぁ…もう、父さんとは遊んでくれなくなったからなぁ…」 「何拗ねてんだよ。誰も遊ばないなんて言ってないだろ?お互い忙しくなっただけだろ」 「え?莉玖、時間が合ったら、また父さんと遊んでくれる?」 「遊んでって…凪彩と3人ならな」 「息子2人と…3人で…ああ……釣竿…そうだ…釣竿買いに行こう…」 父さんが、夢の世界に行ったので 凪彩と、その辺を見て歩く 「凪彩の知ってる埠頭は、どんなん?」 「もう少し広くて、いっぱい大きな船が止まってた…と思ってたけど、俺がもっと小さかったからなのかも」 「ああ…それ、あるかもな」 「景色は?全然違う?」 「うん。でも…埠頭から海見るの好き…」 「そっか」 少し… 色々思い出したいかな 凪彩から離れて 適当にその辺の下の海を見てみたり 船を見に行ったり 適当にぶらぶらする 父さんは… めちゃくちゃスマホで釣竿見てる 凪彩は、遠くを見てみたり しゃがんで、近くの海見てみたり 色々…思い出してんだろな 5歳の時母親死んで 13歳までばあちゃんに育ててもらって… 埠頭は誰との思い出なのか 父親は居なかったのか まだまだ知りたい事いっぱいあるけど そういうの 人に言いたいって思うのか分からない 色々聞いてもらいたいのは どの部分なのか 何でも話したいって 思ってもらえるといいけど 少しでも、凪彩の忘れたくない事 一緒に覚えておきたいけど 俺は、凪彩の気持ち ほんとには分からないから 「凪彩、どう?色々思い出した?」 「うん。母さんにね、歩いてすぐだったから、よく連れてってもらったんだ。俺、船見るの好きで、いつも行く行くって、連れてってもらった」 「凪彩の母さん、どんな人だったの?」 「……凄く優しくて、よく笑ってた。でも…5歳までの記憶だから、覚えてる事あんまり多くない」 「そっか…」 5歳って… まだ幼稚園だもんな 俺なんか、ほぼ覚えてないぞ 「ばあちゃんの家も、そんなに離れてないとこだったから、俺がよく行ってたの知ってて、同じとこに、よく連れてってくれた」 「あ、そうだったんだ。そりゃ、よく覚えてるよな?」 「うん。自分で行けるようになってからも、よく行ったし」 「へぇ~。ここさ、自転車でも全然来れるから、今度来よ?」 「うん……」 いっぱい… 凪彩の頭ん中には 沢山の風景とか 匂いとか 言葉じゃ上手く説明出来ない 沢山のものが浮かんでんのかな 切なそうな 嬉しそうな顔 時々… 隣に居てもいいよって言ってるかの様に 凪彩は俺の方を見て また、ぼーっと海を見る きっと、いつか 今日の事も思い出になって 2人で思い出しながら話すのかもしれない 会話なんてほとんどしてないけど それも今日の思い出だ せっかくの綺麗な風景の中 父さんが 車ん中で、ひたすらスマホ見てたのも… 思い出だ…
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