合格祝い

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「どんなのがいいかしらね~?」 「これは?これ!カッコいいぞ!」 「ん~…カゴは付いてて欲しい」 「そうよね?カゴはあった方がいいわよね?」 「父さんには、今の流行りが分からない…皆、こういう自転車乗ってんのか?」 ダメだ…この人達… ママチャリに… 普通のママチャリになる! タッ タッ タッ タッ 「凪彩!」 「わっ!…愛葵(あき)!」 愛葵が、走って来て、凪彩の腕を組んだ 「え?愛葵?どっから湧いて出た?!」 「うぃ~っす、神谷(かみや)」 「おお、ちゃんと兄も居たか」 兄と、その両親も来てて 俺達もうちの両親と挨拶をする 凪彩が、なんだかキョロキョロしている 「凪彩?どうしたの?」 「ばあちゃんは?来てないの?」 「来てないよ?」 「そっか…」 ほんと、ばあちゃん気に入ってたんだな? 「愛葵、卒業まで、大切に制服使わせてもらいました。ありがとうございましたって、伝えてくれる?」 「うん。凪彩、ばあちゃん好きなの?」 「うん。それに、ばあちゃんのお陰で、ほんとに助かったから」 「……分かった。でも、俺の方が好きでしょ?」 「え?えっと…愛葵との方が仲良し」 「うん!伝えとく!」 どんどん危ない感じになってってんですけど? 「おい、中川…」 隣で、にっこにっこしながら、愛葵を見てる中川に話し掛ける 「なんだ~?微笑ましいなぁ…」 「どこがだよ!微笑ましくねぇよ!凪彩を危ない道に、引きずり込むな!」 「危ない道って?はぁ…愛葵が、家族と離れて、あんなに楽しそうにしてるなんて…良かったなぁ」 いや… 分かるけど それは、いいんだけど 仲良くなり方が、異常だろ! 「絶対、お前のせいだからな?」 「ん?何が?」 とぼけやがって! 結局、愛葵と中川のアドバイスもあり ママチャリは避けられた 良かった 「凪彩、いいの見付かって良かったな?」 「うん。これで莉玖と通える」 「か…コホンッ…そうだな。楽しみだな?」 「うん!」 やべっ 可愛いって、言いかけた 愛葵の事言ってらんねぇ 気をつけよ 「凪彩、明日俺、蒼渚ん家遊びに行くけど、一緒に行く?」 「行く!」 「母さん!明日、凪彩と蒼渚ん家遊びに行くから~」 「はいは~い♪︎」 凪彩が来て、凪彩と仲良くなって 母さんの機嫌いい日が、どんどん増えてく この上なくありがたい ピンポ~ン 「…は~い、来たか」 「来た。凪彩も」 「蒼渚さん、こんにちは」 「おお、入れ」 蒼渚とは、俺より先に打ち解けた? 心を開いた? だからなのか…… なんとなく、俺と居る時より 凪彩が嬉しそうに見える 「ちょっとトイレ」 「おお、行って来い」 凪彩が部屋を出て行くと 「ぶっ細工な顔になってんぞ?」 「は?」 「何、ふて腐れてんだよ?誰も凪彩の事、莉玖から取ったりしねぇよ」 「はあ?!何、訳分かんねぇ事言ってんの?!」 「その言葉が、いつまでも真実である事を願うよ。危ない兄弟愛は、中川だけで充分だ」 「一緒にすんな!」 図星過ぎて怖い え? そんな風に見えてる? 俺、キモい事になってんの? いやいや、蒼渚だからだ こいつ、なんかそういうの分かるもん 「ま、お前がキモい兄になっても、親友で居てやるよ」 「なっ?!なっ…」 なんで分かった? キモいって言った?俺… ん? なんか話し声… 「げっ…」 「あ?今、げっ…とか言ったな?莉玖」 「あ…いや…沙弥姉居たんだ…」 今日は居ないんじゃなかったのか?蒼渚! 「沙弥姉、これから出掛けんの?」 「そ。出掛ける前に凪彩に会えて良かった。こっちこっち」 「おい、ちょっと…」 勝手に凪彩連れてくなよ! 沙弥姉に連れられてく凪彩を追いかけると 沙弥姉が、机から小さな紙袋を持って来た 「凪彩。あんな時期に知らないとこ来たのに、よく頑張ったな。合格おめでと。私の後輩だ」 あ… こういうとこ…あんだよな 凶暴女のくせに 「あの…でも俺、沙弥さんの弟じゃないし…」 「凪彩、受け取っとけ。俺ん時も貰ったんだ」 「あ…じゃあ…でも、ほんとに…いいのかな?」 凪彩が、まだ少しためらってると 「じゃあ、凪彩にお礼してもらおっと」 「お礼?うん。何でもする」 「あ!凪彩!何でもなんて言うな!命の危険があるぞ?!」 「うるっさいな莉玖。あっち行ってろよ」 「はあ??凪彩は、俺の弟だぞ!」 「皆して、何騒いでんの?」 蒼渚が登場した お前の姉ちゃん、野放しにすんな! 「蒼渚!なんか、沙弥姉が、凪彩にお礼しろとか、恐ろしい事言ってんだよ!」 「お礼?…ああ、俺達にもくれたアレか…で?なんで沙弥姉は、凪彩の耳元でコソコソ話してんだ?」 「はあ?!」 振り返ると、沙弥姉が、凪彩の耳元から離れて、ニンマリ微笑んでいる 何だ? 嫌な予感しかしない 言いなりになるな!凪彩! 「凪彩…!」 「沙弥さん…ほんとに、ありがとうございます。あの…今回だけじゃなくて、カバンの事も、高瀬の事も…ほんとに沢山ありがとうございます」 ペコリと頭を下げた 凪彩… 確かに… 沙弥姉のお陰で、凪彩の短い中学生活は変わった 高瀬が凪彩に話し掛けるお陰で、凪彩にも話し掛ける人達が増え 苛められる事もなくなり 安心して、学校に行けるようになった それは…確かに… すげぇ感謝…かな… なんて考えながら、ちょっとだけ微笑ましく見てると ちゅっ ……………え?…は? あれ? 凪彩…今…沙弥姉のほっぺたに…… 「ありがと。しっかりお礼貰った。じゃ、ゆっくりしてって」 ワシワシと凪彩の頭を撫でて、沙弥姉が立ち上がる 「おら、アホ面退けろ。私の部屋から出ろ」 はっ…!! 「なっ…凪彩になんて事させてんだよ!」 「あ?お礼だっつってんだろが」 「あんなお礼あるか!凪彩の大事な…大事な…」 「ぷっ…!莉玖…お前、ファーストキスもまだか」 なっ?! 凪彩の前で…何て事言うんだ?! 「はあ?!んな訳あるか!」 「はいはい。モテない男は、めんどくさいね~。凪彩はモテるから、あんなんで動揺なんかしないよ?おら…モテない兄貴、さっさと退けろよ。デート遅刻したら、お前半殺しな」 「……へ?凪彩は…モテるの?」 沙弥姉に蹴飛ばされる様に部屋から追い出され 放心状態で、蒼渚の部屋へと戻る
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