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いよいよ行灯行列スタート
バトン部、吹奏楽部の後に、クラス毎の大きな行灯が並ぶ
大きな行灯は、男子が担ぎ
手に持つランタンの様に小さな行灯を、女子達が持って、各クラス歩き出す
道端で見ている、小さな子供達に、女子達が声をかける
「ちょうだい」
そう言われると、持ってる行灯をあげる
中継地点に着く頃には
半分以上の女子の行灯はなくなる
中継地点で1度休憩
その後、いよいよ行灯点灯となる
「蒼渚~。凪彩の様子見に行こ」
「おお」
なんだかんだ言って
蒼渚も、第2の兄みたいになってるので
凪彩んとこ行く時は、大抵付いて来る
「うぃ~~!凪彩!」
「莉玖!」
「お?元気だな」
「うん!すっごく楽しい!」
「そっか、そっか。疲れてないか?」
「うん!」
すっげぇ楽しそう
良かった
「帰りはきっと、あのババァ居るぞ?」
「頑張って探す!」
「いや…多分探さなくても、すぐ分かる」
「そう?」
凪彩と離れ
クラスの奴らと、散々写真撮って
いよいよ行灯点灯しながらの帰路
しばらく歩いてると
「莉玖~~!蒼渚く~~ん!」
「げっ…出た…」
「おお…神谷の母さんか?すげぇな?」
「莉~~玖~~!蒼~渚~く~~ん!」
「デケェ声出すなっつったのに!あのババァ!」
俺の愚痴など、全然聞く様子もなく
蒼渚が、母さんの方に近づいて行き
思いっきり両手で応えている
もう蒼渚が一人息子って事でいいよ
「莉~~玖~~!」
「なっ…?!」
まだ言うか!
「神谷、ちゃんと応えてやれよ、ほら」
ドンっと押される
「おわっ…!」
「莉玖~~!莉玖、莉玖~~!」
恥ずっ!
名前、連呼すんな!
「はい!2人並んで~…はい!オッケー!」
なんも、オッケーじゃねぇよ
皆見てんじゃねぇか!
「あの、くそババァ、帰ったら殺す!」
「学習しない男だな。やっぱ嬉しいもんだなと思っても、あと1年しかないんだぞ?ありがたく思え」
「~~っ!嬉しいもんだなとか!これからも!思わねぇよ!」
「なんだなんだ?神谷は、反抗期か?」
「いや…莉玖は、思春期なんだ」
「ほう…」
ほう…じゃねぇよ!
納得すんな!
そんなこんなで
ようやく着いたと言うべきか
ついに着いてしまったと言うべきか
学校に到着
行灯を置いたら、キャンプファイヤーの周りに、ぐるっと集まる
皆が集まったところで、キャンプファイヤー点火
校歌斉唱
そこから、全学年入り乱れての
ジェンカとマイムマイム
ベタ過ぎる程ベタだけど
なんか…毎年感動する
そして最後に
ヒュ~~…ドンッ パラパラパラパラ…
打ち上げ花火だ
これを見ると、終わった~~って思う
いや、これから本祭なんだけどね?
なんか、俺達の中では
ここで、かなりのやりきった感がね…
ドンッ パラパラパラパラ…
これ…
あと1年しか出来ないのかぁ…
それは寂しいな
消えてく花火が…
尚更そう思わせる
「凪彩」
「あ、莉玖。探せないかと思った」
「暗いからな。気を付けて帰るぞ?」
「うん」
凪彩と蒼渚と、信号で止まる度に
興奮気味に…
って、聞いてて思うのは俺だけだと思うけど
2人共、明らかに口数が多いので
俺には分かる
疲れてるはずなのに、興奮して
全然疲れてない
「はぁ~~っ…やっぱ疲れてんなぁ。風呂入ると分かるわぁ」
「うん...」
隣で、風呂に浸かってる凪彩が、遠い目をしてる
「ふっ…楽しかったの、思い出してんの?」
「うん…忘れたくないから、何回も思い出す」
「俺も、前夜祭は、毎年しばらく思い出してるわ」
「うん...凄かった…」
「肩、痛くなんなかったか?」
「…うん...」
だよな~
あれ、初めては
かなり楽しかったよな~
2人して、ぼ~~っとしてたら
凪彩が、のぼせた
「大丈夫か?」
「……うん」
「莉玖も一緒だったのに、そんなに長い時間入ってたの?」
「うっ…2人して、ぼ~~っとしてた」
風呂から上がるなり
脱衣所で凪彩が、崩れる様に座り込み
ソファーに運んで、頭冷やして
別の意味で、ぼ~~っとしている凪彩が
「母さん…」
と話しかける
「何?気持ち悪い?」
「…見に来てくれて、ありがとう」
「え?」
「母さん…凄く大きな声だったから…」
「そ…そうかしら?」
そうだよ!
「皆…俺の母さん、見に来てるって分かって…母さん見に来てくれたんだね?……元気な母さんだね?……凄く楽しそうに手振ってるね?って……沢山皆に声かけられた」
「そう♪︎」
♪︎じゃねでよ
いじられてんじゃねぇか
「莉玖と…同じ学校で…お兄ちゃん同じ学校なんだね?って…声かけられて……母さん見に来て…声かけられて……家族が居て…皆に見てもらって…それを話して……ずっとしたかった」
「凪彩…本祭だって行くし、来年も再来年も行くんだからね?」
「うん…毎日…楽しみ…」
再来年は、俺はもう居ない
凪彩の兄ちゃんで、同じ学校は
来年までなんだな
「よ~~し!俺も、もっと凪彩んとこ、顔出しに行こうっと」
「うん...莉玖も蒼渚さんも…格好いいって、人気者だから…俺、少し自慢」
「マジで?!格好いいって?マジで?!」
「凪彩、莉玖に変な気を遣わなくてもいいのよ」
「変な気って何だよ?!」
「いいから、少し静かにしなさい。凪彩も、少し寝てなさい?」
「…うん」
そう言って母さんが台所へと消えてった
「凪彩、ごめんな?俺までぼ~~っとしてて、気付かなかった」
「……ううん…お風呂……入ってなくても…のぼせてた……かも…」
「……え?」
そのまま、凪彩は寝てしまって…
お風呂入ってなくても、のぼせてた?
前夜祭の事考えて、興奮し過ぎてって事?
じ~~っと、凪彩の顔を見る
喜怒哀楽が控えめな奴の変化は難しい
蒼渚タイプだからな
そんなに…静かに興奮してたんか
可愛い奴め
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