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本祭
「いらっしゃい、いらっしゃい~」
「たこ焼き、いかがですか~?」
「可愛いタコちゃん付いてますよ~」
「好きなトッピング選べますよ~」
客入りは、まあまあ
もうちょい入ってくんないかなぁ
「莉玖~!来たわよ~!」
「げっ…声!デカイんだって!」
「たこ焼き屋さんなのね~」
「はっぴ着てんのかぁ…いいなぁ…」
「いいから、早く中入れよ!」
「神谷の父ちゃんと母ちゃんか~?こんにちは~」
「食べてって下さ~い!」
皆寄って来た!
「お前ら群がって来んな!父さんと母さんも、早く入れよ!」
「父さん、母さん…」
「凪彩!あら~…えっと…」
「愛葵」
「そうそう。愛葵君と来たのね?」
「丁度いいな。じゃあ、皆一緒に食べに行くか」
「おお…神谷家、勢揃いか。神谷ほら、ちゃんともてなせ~」
何故…こんな事に…
「凪彩…休憩なのか?」
「うん。さっき、俺のクラスにも、父さんと母さん来て行ったよ」
「そうか…」
既に一仕事終えてたか
「あ!蒼渚君が作ってくれるの?!」
「いらっしゃ~い。何個焼きますか~?」
「おお…蒼渚君、完璧なたこ焼き屋台さんだな」
「蒼渚さん、格好いい…俺と愛葵は2人で10個」
「あいよ~」
「凪彩!俺の方が好きでしょ?!」
何これ…
愛葵が居る事によって注目度が増すんですけど
「おじさんと、おばさんは10個ずつっすか?」
「そうね?余ったら、凪彩達に食べてもらえばいいわね?」
「たこ焼き10個上がり~!凪彩、愛葵、そっちでトッピング聞いて」
「はい」
蒼渚が…ほんとに、本物の人みたいになってる
「莉玖!ぼけっとしてないで、凪彩と愛葵を席に連れてけ!」
「あ…はい」
怖っ…
蒼渚怖っ…
「蒼渚君、素敵~♪︎」
素敵?
どうなってんの?感覚…
「はい。水どうぞ」
「凪彩、凪彩、1個食べさせて~♪︎」
「え?えっと…熱いよ?」
「じゃあ、ふ~ふ~して♪︎」
調子乗んなよ?愛葵!
なんで、この異常事態を、父さんも母さんも微笑ましく見ていれるんだ?!
「ふ~…ふ~…」
「凪彩…愛葵の言う通りにしなくていいんだぞ?」
「?」
?
じゃねぇんだよ
すっかり洗脳されてる
「はい、愛葵」
「あ~…んっ…美味しっ」
「「「きゃ~~っ!可愛い!!」」」
は?
どっから出てきたんだ?この子達…
「あのっ…あのっ…写真撮っていいですか?」
「え?」
ダメに決まってんだろ
「凪彩も愛葵君も可愛いからね~。撮らせてあげたら?」
は?
「可愛いく撮ってね?」
愛葵!
「はい!」
はあ?!
「ちょっと…」
パシャ パシャ
「私もいいですか~?」
「私も!」
いや…
モデルじゃねぇんだから!
愛葵!
更に調子に乗って、凪彩にくっ付くな!
「ちょっ…」
「神谷!一気に大盛況だ!」
「は?」
「ちょっと、こっち手伝って!」
振り返ると
「はあ~~?」
いつの間に出来てたんだ?この行列!
「こっち側に並んで下さいね~。神谷!」
「おお!…えっと…はい、こっちでトッピング選んで下さいね~…あ、こっちの席空いてますよ~!」
何だこれ?
何でこうなった?
…って…凪彩と…何より愛葵のせい!
ベタベタ ベタベタくっ付きやがって
「はい…水で~す」
ベタベタ ベタベタ
「いらっしゃいませ~」
ベタベタ ベタベタ ベタベタ
「うぉい!凪彩にくっ付き過ぎだ!」
あ…
ヤベっ…
教室中が凍りついた
「あ…いや…」
「莉玖ったら、愛葵君にヤキモチ妬いちゃって~」
「へ?」
「ヤキモチ妬いたお兄ちゃんも、一緒に撮ってあげて~」
「は?」
「「「はい!」」」
パシャ パシャ
「いや…ちょっと…」
「莉玖…ほんと?」
「え?」
凪彩の隣にしゃがむ
「ヤキモチ…妬いてくれたの?」
「なっ?!…い…いや…」
「お兄ちゃんなんですか~?」
「いっ?」
「はい。俺のお兄ちゃん」
「…っ!」
お兄ちゃんって…言った
凪彩に…
お兄ちゃんって言われんの
ヤバい
「凪彩!俺の方が好きでしょ?!」
「え…」
「あ!そんな、くっ付くなって愛葵!」
「わっ…」
「凪彩、取らないでよ!莉玖!」
「うわっ…」
「おい!大体お前、年上に呼び捨て失礼だぞ!」
「どっ…どっちも好きだから…喧嘩しないで」
「ありがとうございました~」
「凪彩君と愛葵君もありがとね~」
「凪彩君、愛葵君、こっち向いて~」
「きゃ~~!」
ようやく出て行った…
凪彩達にはまだ、女の子達が付いてってるが…
「……つ…疲れた……」
「お疲れさん、神谷。売り上げに貢献してくれたから、休憩していいぞ~。月川も疲れたろ。休憩入れ~」
「おお」
「つっ…かれた~~…」
「俺も疲れた」
蒼渚と、カレーライスを売ってるクラスに入りバクバク食べる
「母さんが来ると、ろくな事がない」
「んな事ないだろ。うちのクラスの売り上げ、すげぇ事になったぞ」
「それはまあ…そうかもしれないけど…」
「それに莉玖…凪彩に、お兄ちゃんって呼ばれて、すげぇ喜んでたじゃん」
「んなっ?!…ちっ…違っ…」
「良かったな?お兄ちゃん」
「お兄ちゃん言うな!」
くそっ…
蒼渚は焼くのに忙しくて見てないと思ってたのに
しっかり見られてたのか
それにしても…
「蒼渚…お前、たこ焼き焼いてる時…なんか別人だったぞ?」
「そう?」
「悪い事は言わないから、絶対たこ焼き職人にはならない方がいいと思うぞ」
「安心しろ。そんな、選択肢はない」
「……愛葵の奴、調子に乗りやがって」
「皆、微笑ましく見てたじゃねぇか」
「信じらんね~」
普段から教室でも、あんな事してんのか?
「ヤキモチ妬いてた莉玖も可愛いかったぞ」
「っ!笑ってろ!」
「まあ、俺達としては、神谷一家と愛葵に感謝だけどな」
「あそこで撮った全ての写真を消去したい」
「カレーライス旨いな」
「あ?ああ…」
ここは平和だ
静かな空間で
旨いカレー
これでいいんだよ
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