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じ~~~~~~っ……
「モテない兄貴、モテる弟に穴空くぞ」
「あ?!誰がモテないって?!…じゃなくて、凪彩!凪彩って、モテるの?!」
「モテないと…思うけど…」
「はっ!それよりファーストキス!した?沙弥姉が初めてとか…不憫でならない…」
「あ…それは、初めてじゃないから大丈夫」
「え?!そうなの?!」
「莉玖…うるさい」
中学卒業したばかりだけど
それまでも、学校転々としてたみたいなのに
ファーストキス、済んでんの?!
これは…
「認める…」
「え?」
「凪彩、お前はモテる男だ」
「なんで?」
「みなまで言わせるな…」
「?」
「モテない兄、そろそろ昼どうするか決めるぞ」
「モテない言うな!俺だって、全然モテない訳じゃない!」
「弟に嫉妬すんなよ」
「嫉妬してない!」
結局、ハセストア略してハセストの焼き鳥弁当を買いに行き
「うんっま!」
「やっぱタレだな」
「やっぱり不思議…焼き鳥だけど、皆豚肉…」
自分と俺達の焼き鳥弁当を、じ~っと見ている
「俺達からしたら、豚肉が普通なんだけどな?」
「凪彩、最近分かんなかった言葉とかないの?」
「分かんなくはないけど…凄く、ささるって使うね?」
「刺さる?」
「うん…書かさったとか、押ささったとか…」
え…
「書かさるとか、押ささるとか、標準語じゃないの?」
「違うと思う。こっちに来て初めて聞いた」
「マジか!じゃあ、なんて言うんだ?」
「書いちゃったとか、押しちゃった?」
書いちゃった…
書かさった…
「なんっか、違うくないか?蒼渚」
「ん~…書いちゃったって、俺が悪いみたいだからな。俺が悪くないのに使いたい時だからな」
「そう!それ!俺は悪くないんだよ!なんて言うの?」
「え?何て…書こうと思ってなかったけど、書いちゃった?」
「長っ!標準語使いづらっ!」
「確かに…そうかも……ささる…便利かも…」
標準語じゃなかったなんて衝撃だ
「他は?聞き覚えのない言葉なかった?」
「なんか…あったんだけど……何だっけ…」
再び蒼渚に聞かれて、凪彩が食べながら考える
「凪彩、どんな場面だったんだ?」
「なんかお店の人同士が、コード丸めてる時に…けっこうグチャグチャに絡まってて……そうだ…凄く困ってるね?って話してた」
「そりゃ、困ってるじゃなくて、くまってるだ」
「くまってる…」
「そ。絡まってるとかって意味」
「困ってるじゃなかったんだ。くまってる…」
もう、そんな年寄りじゃなかったら
方言ったって、そんなないだろと思ってたのに
「凪彩を見てると、ほんとに訛ってんだなぁって思うわ」
「ほんとだな。東京の大学…は、まだいいとして、就職なんかしたら、笑われるどころか、注意されるかもな」
「イントネーションも…凄く違うなって思う」
「確かに!凪彩と俺達違うもんな?俺、大人しく道内で一生を送ろうっと」
「マジか。莉玖、一生道民決定か」
「俺も北海道好き」
「お~!凪彩!一緒に道内に居ような~」
「うん」
可愛い!
うん、だって
可愛い!
「凌久、中川街道一直線だな」
「はあ?!ああは、ならねぇよ!」
「いや、もう結構いいとこまで行ってるぞ」
「やめろ!一緒にすんな!」
「蒼渚さん、中川街道っていうのは?」
「凪彩、これは方言じゃなく…」
「何でもない!気にすんな凪彩!」
蒼渚を睨んでやる
余計な事言うな!
「あ、そうだ。沙弥姉のプレゼント開けてみたら?」
話題をそらせなきゃ
「あ、うん。じゃあ、開けてみる」
凪彩が丁寧に開けてくと
「う…わぁ…時計!」
「おお…カッコいいじゃん?」
「うん。沙弥姉、センスいいから」
俺達が覗きこむと
「こっ…こんな立派な物貰えない…」
どうしよう…
と、いった表情で見てくる
「凪彩に、あんなお礼させたんだから、貰っとけ」
「で…でも…時計だなんて…高級な物…」
「沙弥姉、人にプレゼント贈るの好きなんだよ。あんな犬猿の仲の莉玖にも贈ってんだから、貰っとけよ」
「ま、俺は長年の慰謝料だと思っている。ま、うちと、蒼渚ん家は親同士も仲良くしてるからさ。後でなんか、沙弥姉が喜びそうな物でも返してくれるよ」
不要だけどな
あんな…凪彩のキス貰っといて
俺だって、してもらった事ないんだぞ!
当たり前だけど
「じゃあ…ありがたく、いただきます」
「うん。俺達も、これの別シリーズだよな?莉玖」
「そうそ…って、これ、なんか心拍数とか分かるヤツじゃね?すげぇ!」
「沙弥さんに…出世払いしなきゃ」
出世払い…
沙弥姉が、ずっと此処に居ない事を祈る
家に帰り、父さんと母さんに凪彩が、沙弥姉からのプレゼントを見せる
「まぁ~…沙弥ちゃん、凪彩にもくれたの~?ほんっと優しい子ね~?」
は?
あなたの息子
昔から会う度に攻撃食らってますけど?
「こんな高級な物だと思わないで、受け取って来ちゃった」
「だいじょぶ、だいじょぶ。沙弥ちゃんの大好きなお店の1日優待券あげとくから。ね?」
「おお。父さんの友達がやってる店が、お気に入りらしくてな。任せろ」
「うん。宜しくお願いします。俺も、バイトしたら、皆に少しずつ返す」
凪彩…
「凪彩も優しい!でも、凪彩の行く学校、許されてるバイト限られてるし、まずは高校生活楽しむ事。それが、今の凪彩に出来る最大の恩返し。バイトは、高校卒業したら、好きにしなさい?」
母さんに、そう言われると
「うん…分かった。俺、学校楽しみ」
「凪彩が楽しいのが、皆も楽しい!」
「父さんも楽しみ!」
「俺も!」
もう、これからは楽しい事がいっぱい待ってて
もう、凪彩が泣く様な事なんて起きない
と、思ってた
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