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朝から、必要以上に近くに居て
もう自分で出来る事まで手伝ったりして
皆が迎えに来ても、何度も振り返りながら、凪彩は出て行った
「帰って来たらハグしてやろ」
「やめとけ、危ない兄」
「わっ!」
凪彩の事思い出してて
蒼渚居るの忘れてた
「危ない兄から離れても、愛葵に纏わり付かれてんだろうけどな」
「それ!愛葵!最初は、ああいう状況だったしなと思って、大目に見てけど、ちゃんと学校行き始めても、すっかり凪彩と遊び歩く様になっても、全然変わらない!どころか、パワーアップしてる!どうしてくれんの?!」
絶対周りから
怪しい目で見られる
凪彩まで巻き込まれて可哀想じゃん!
「どうしようもねぇな。愛葵が言う事聞くのは中川だけだし、中川は、この状況喜んでるからな」
「凪彩が…そっちの道に行っちゃったら…どうすんだよ」
「行っちゃったら、莉玖の責任もあるな」
「ねぇよ!」
「本人困っても嫌がってもないんだから、そっとしとけよ。あの2人なら、男同士でくっ付いてても、周りに不快感どころか、与えるのは癒しだろ」
男同士で…
くっ付いて…
「蒼渚さっ…んんっ!…はっ…蒼渚さ…」
「もっと…はぁ…名前呼んでよ」
「うわ~~~っ!!」
「なっ…何?!」
「莉玖~?どうしたの~?」
キッチンから、母さんが叫ぶ
「…っ何でもな~い!」
「そう~?」
リアルに思い出しちゃった
蒼渚と凪彩が…
「莉玖…お前、泣いてんの?」
蒼渚が、ベッドに座ってる俺の顔を覗き込んで来た
「泣き止んだ?沙弥姉がキスされてんの見た時から、キスしたいって思ってた」
「っ…やっ……やめろっ…近づくな…」
後退ろうとするのに
上手く動けない
蒼渚の顔が、どんどん近づいて来る
「おっ…落ち着け……蒼渚…俺……莉玖だっ…!」
もう顔が当たりそうなとこまで来ると
蒼渚が目を閉じる
ほんとに?
俺、蒼渚とキスすんの?
なんで?!
やだっ…!
ぎゅっと目を瞑る
「……………」
あれ?
キスされない
目を開くと
「~~~っ…っ…っ…」
蒼渚が、俺から離れて下を向いている
腹…すげぇ押さえて痛いのか?
「蒼渚…?腹…」
「くっくっくっくっ…はぁ~~~っ…おまっ…くっくっくっくっ…おかしっ…」
「なっ?!…~~~~~っ!」
遊ばれた!
めちゃくちゃ遊ばれた!
「はぁ~~っ…おかしっ…俺、莉玖だ!って…くっくっくっ…知ってるわ!」
「うるせぇ!お前の頭おかしくなったと思ったんだよ!」
一瞬
すげぇ怖かったんだぞ?!
そんなんしたら
親友で居られなくなんだろが!
「くっくっくっ…はぁ…久しぶりに爆笑した…」
そう言って、蒼渚が俺の顔を触ってきた
「なっ…?!触んな!」
「まさか、泣くとは思わなかった。悪い」
「なっ…泣いてねぇし!」
「んじゃ、これは…目ん中から汗でも出てきたか?」
「~っ!…そうだよ!触んな!」
腹立つ!
俺は今、そっち系の話に敏感なんだぞ!
「何?この前の夢の話?まだ、引きずってんの?」
「もはやそれに、+αが付きまくってる…」
「男に告白でもされた?」
「…えっ?!」
「マジか…」
「違っ…えっ?…蒼渚も…男に告白された事あんの?」
「ないけど?」
「ほっ…だよな?」
俺の知らない間に
周りは、それが普通になってたのかと思った
ってか…
男だろうが、そんなホイホイ告白されてたまるか!
「で?どうすんの?付き合ってみんの?」
「…はあ~?みねぇし!ってか、違うって!」
「まあ、どっちでもいいけど、ヤキモチ妬かれて、嫌がらせとかゴメンだから、男と付き合う時は言ってくれ」
「………蒼渚…何故そんな平然と、俺が男と付き合う話が出来るんだ?お前の幼馴染みで親友が、男と付き合い出して、お前は受け止められるのか?!」
ビシッと蒼渚を指差してやる
「…別に?莉玖が、誰と付き合おうと、男だろうが、オッサンだろうが、ばあちゃんだろうが…それで、お前が変わんなきゃいいんじゃねぇの?」
なんだろう…
こういうとこ
あの凶暴女の弟だよなって思う
「?…何?顔赤いけど…照れてんの?」
「照れてねぇし!」
左腕で顔を隠す
「照れてんな?」
「照れてねぇ!」
「りっちゃん、照れてんな?」
「りっちゃん言うな!」
ピンポ~ン
誰かが来て、母さんが玄関で話してる
けど…
蒼渚の遊びは止まらない
「なぁ、いい事教えたげようか?」
蒼渚が、俺のすぐ横にピッタリとくっ付いて近づいてくる
「いい!」
「教えて欲しいって事?」
「教えなくていい!」
「ほんとに?莉玖が知りたがってる事のヒントだよ?」
「……え?」
俺が知りたがってる事?
何だ?
「何?」
蒼渚の方を向く
「凌久さ、俺ん家に初めて遊びに来た事の事覚えてる?」
「蒼渚ん家に…初めて………いや…よく覚えてねぇな…」
「そ?りっちゃんと…あ~くん…初めて、あ~くん家で遊んだ時の事だよ?」
「…あ~くん家で…初めて…」
ドサッ
ん?
部屋の入り口に…
「黒木!…と、中川!」
「お、莉玖のお見舞いか?学校行ってるけど」
「お前ら…今…」
「へぇ~?黒木、色々話聞こ♪︎」
黒木は呆然とし、中川は非常に機嫌が良さそうだ
「莉玖、皆来てくれたなら、こっち来てソファーにでも座れば?」
「おお。そうすっか」
「立たせるか?」
「おお」
蒼渚が肩を貸して立たせてくれる
足は、無理に運動とかしなきゃ、動かしていいらしいので、俺が痛みに堪えられるかどうかの問題
もう、だいぶ痛みはなくなってきたけど
なんか、足引きずって歩くのが癖になったって言うか
そうする方が痛くないって、すっかりインプットされたらしく…
負けてたまるか!
「歩くのは大丈夫か?」
蒼渚が声を掛けてくれるが
「大丈夫だ!」
立派にスムーズに歩いてみせよう
「何故そんなに張り切ってるんだ?」
びびるな!
俺の足はもう大丈夫!
そう思ってんのに、なんか普通に歩けない
やっぱ、びびってんのか?俺!
くっそ~……!
自分の体なのに、イライラすんな
「ふんっ!」
ダンッ!!
「「「は?!」」」
「っ!…いってぇ~~~!!」
思いっきり右足で床踏んだら、さすがに痛過ぎた
右手で右にあるソファーに寄り掛かろうとして、右手が三角巾の中にしまわれてた事に気付く
「うわぁ~っ!」
「ちょっ…」
そのままソファーだか床だかに向かって倒れ込む
ゴンッ!
鈍い音…
「だっ…大丈夫か?!」
「おい!」
「大丈夫?!」
あれ?
どうなった?
目を開くと
「…っ…てぇ~…」
頭の上から声が…
え?
蒼渚の上!
「蒼渚!」
「急に動くな…」
「え…?」
蒼渚の上から離れようとすると
そう言われて止まる
「お前が…急に動くと、ろくな事がない。ちょっと待て…」
「蒼渚!大丈夫?!」
「大丈夫か?月川」
「神谷も大丈夫か?」
「蒼渚君、痛いとこは?」
俺の方が体デカイのに
床って事は…
すげぇ力で押し潰した
「少し…体浮かせていい?」
「右手と…右足使うなよ?」
「分かってる…」
ゆっくり蒼渚から体を離す
ようやく蒼渚の顔が見える
「…~っ蒼渚…大丈夫?」
「ふっ…デッカイ重し無くなったから大丈夫」
「ごめんっ…!」
「泣くな…ば~か」
中川と黒木と母さんの力を借りて
俺達は無事ソファーへと着席した
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