5人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「や、やめてくれ!!もう、魔力は出せない!」
コルマーのまた別な路地裏。
ゴミ箱の陰になっている場所で男の悪魔が這いつくばり、泣き叫んでいた。
体はボロボロで、覇気も無い。
感じられる魔力は、ギリギリ声が出せるくらいだろう。立てるはずがない。
「さすがルシアスさんが作ったものだ!『アレ』よりかは幾分劣るが、これを続けていけば……!」
一方、かわいそうなことになっている彼の前には、淡く輝く赤い宝石のついたペンダントを見つめる、歪んだ笑みの男がいた。
彼は昔私の部下だった男の一人だ。名前は……あぁ、忘れてしまったがね。
話からして、研究結果を書いた資料を持ち出したのだろう。そしてそれを使ってあのペンダントを作った──。
ふむ、彼の言う通り、『紅い宝石』よりかは確かに劣るだろう。1000分の1にも満たないがね。
あぁ、嘆かわしい。その鑑識眼を持ち合わせていながら、窃盗をしてしまうなんて。しかも私の研究の成果物を利用して、こんなことをするなんて。
ま、私も似たようなことをしようとしていたが、こんなに時間のかかるものではなかったはずだ。『紅い宝石』の劣化版のこのようなところを見て、さすが私と思うところもあるが、まだ改良の余地があったな……と恥ずかしく思うところもある。
──ザザ……ザー……。
水蛇さんが急かしてきた。
「そうですね。ショーもそろそろ見飽きてきたところです。幕を下ろしてあげましょう」
私は4、5階はありそうな建物の屋上から飛び降りる。
──足は大丈夫なのかって?
そういえば教えていませんでしたね。
私はあの日、爆発で足首から先を切断することになりました。
魔法で身体を強化していたものの、一番大切な『心臓』から外に向かって強化したため、長い足の先まで間に合いませんでした。
爆発を受けて死ぬなんてヤワな身体ではないですが、後遺症くらいは残ります。後遺症なんて残れば、今後の研究がやりにくくなるだけなので、そうなるならと考えた結果がこれでした。
大丈夫ですよ。足先は水の魔法で隠しています。常にモザイクをかける必要はありません。
それに便利なんですよ、魔法で隠した足は。
どんな足への攻撃も、痛くなくなるんですから。
最初のコメントを投稿しよう!