舞台裏で水蛇は踊る

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「や、やめてくれ!!もう、魔力は出せない!」  コルマーのまた別な路地裏。  ゴミ箱の陰になっている場所で男の悪魔が這いつくばり、泣き叫んでいた。  体はボロボロで、覇気も無い。  感じられる魔力は、ギリギリ声が出せるくらいだろう。立てるはずがない。 「さすがルシアスさんが作ったものだ!『アレ』よりかは幾分劣るが、これを続けていけば……!」  一方、かわいそうなことになっている彼の前には、淡く輝く赤い宝石のついたペンダントを見つめる、歪んだ笑みの男がいた。  彼は昔私の部下だった男の一人だ。名前は……あぁ、忘れてしまったがね。  話からして、研究結果を書いた資料を持ち出したのだろう。そしてそれを使ってあのペンダントを作った──。  ふむ、彼の言う通り、『紅い宝石』よりかは確かに劣るだろう。1000分の1にも満たないがね。  あぁ、嘆かわしい。その鑑識眼を持ち合わせていながら、窃盗をしてしまうなんて。しかも私の研究の成果物を利用して、こんなことをするなんて。  ま、私も似たようなことをしようとしていたが、こんなに時間のかかるものではなかったはずだ。『紅い宝石』の劣化版のこのようなところを見て、さすが私と思うところもあるが、まだ改良の余地があったな……と恥ずかしく思うところもある。  ──ザザ……ザー……。  水蛇さんが急かしてきた。 「そうですね。ショーもそろそろ見飽きてきたところです。幕を下ろしてあげましょう」  私は4、5階はありそうな建物の屋上から飛び降りる。  ──足は大丈夫なのかって?  そういえば教えていませんでしたね。  私はあの日、爆発で足首から先を切断することになりました。  魔法で身体を強化していたものの、一番大切な『心臓』から外に向かって強化したため、長い足の先まで間に合いませんでした。  爆発を受けて死ぬなんてヤワな身体ではないですが、後遺症くらいは残ります。後遺症なんて残れば、今後の研究がやりにくくなるだけなので、そうなるならと考えた結果がこれでした。  大丈夫ですよ。足先は水の魔法で隠しています。常にモザイクをかける必要はありません。  それに便利なんですよ、魔法で隠した足は。  どんな足への攻撃も、痛くなくなるんですから。
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