舞台裏で水蛇は踊る

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 ──パシャンッ! 「だ、誰だ!?」  下りたあと、すぐに見つかってしまった。水の音がするし、白衣姿なのだから当たり前だ。髪も長いし、杖も長い。足も長いし──おっと、これは自虐、というのになるのかな? 「おやおや……。この顔をお忘れで?」  暗い所から比較的明るい所に出る。  私の顔が見えた途端、彼の顔が青くなった。 「まっ……まさか、そんな!?」 「ふふふ……。随分と非人道的なことをやっているのですね」  もう一歩踏み出すと、私の周りに2匹の水蛇さんが現れた。  ──ザザ……。  ──シャー! 「ああっ!助けてください!もう、体が動かなくて……!」  その場で這いつくばっている男は、必死に頼み込む。 「それはあなた次第です」  私は冷たくあしらった。  返事をしている隙に逃げられでもしたら面倒だからだ。 「ルシアスさん!勝手に持ち出したことは謝ります!ですから見逃してください!」  元部下は自分の立場がわかっていないような世迷言を口にする。なんて愚かなのだろう。 「……はぁ。元々そのために来たわけではありません。私は『ガジェット』の行方を知りたいだけなのです」 「は、はあ?ガジェット?あのガジェット?」  ガジェット──私が今動いている理由、それを持っている者の名前だ。  研究所では全員コードネームで動いていた。なのでガジェットの本名はまた別のものである。  目の前の彼はその『ガジェット』という名前だけ知っている。それだけで十分だった。 「はい。彼がどこに行ったのかはご存知ですか?」 「知るわけないですよ!研究所が爆発したってのも、外に出てから知ったことですし……」  そういえば彼が姿を消したのは爆発前だったか。それでも、ガジェットのことを覚えている人がまだ存在するのは前進に入る。  しかし────。  ──あぁ、残念だ。誠に残念だ。 「そうですか。ありがとうございます。ですが私のことを見た──それだけで、あなたを殺す理由ができました」 「──は?」  その顔。その顔が見たかった!  ──悪人には何をしてもいい。  それは人間や悪魔、その他の種族に共通する心の奥底だ。  人間は心から反吐が出るようなことを平然とやってのけるのは研究結果が証明しているが、悪魔は少し違う。  たまに心が腐ったような者もいるが、悪魔は追加で『魔法』を使う。『魔法』がどんな結果を生むかなんて、誰も想像がつかないだろう?  ──今回は、同じ目に遭っていただかなくては。
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