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世間の悪意を浴びせられ続けた私たちは、人の好意をひねくれて受け取る癖がついていた。だからどんなに母さんから優しい言葉をかけられても、素直に聞けない可哀想な子どものままだった。このままじゃいけないと思っていた。
食事が進む中、翔兄さんがふと俊兄さんに話しかけた。
「俊、今度の週末、一緒に釣りに行かないか? 久しぶりに兄弟で楽しもうよ」
俊兄さんは一瞬驚いたように顔を上げたけど、すぐに冷静さを取り戻し、「別にいいけど」とぶっきらぼうに答えた。
父さんはその瞬間を逃さず、「それはいいね。みんなで行けば、楽しい時間を過ごせるな」と微笑んだ。
母さんが気まずそうに、その日は会議があるから行けないと言った。「ああ、私も行きたかったわ」と口を尖らせた。
食事が終わり、順にお風呂に入った後、私は俊兄さんの部屋の戸の前に立ち、静かにノックした。返事がないので少し躊躇しながらも「私。開けていい?」と声をかけた。
中から俊兄さんの声が聞こえてきた。
「彩か。兄貴かと思った。入れよ。」
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