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私はその言葉に少し驚き、心の中で反芻した。俊兄さんは翔兄さんなら部屋に入れないつもりだったのだ。俊兄さんの心の中に根深い感情が潜んでいることを感じ取った。
部屋に入ると、俊兄さんはベッドの上でスマートフォンを弄っていた。私は翔兄さんに気づかれぬよう、音を立てないようにして部屋の中に足を踏み入れ、ドアを静かに閉めた。
「なんか用?」
俊兄さんが軽く尋ねた。
私は意を決して口を開いた。
「ねえ、俊兄さん、今日の翔兄さんの提案、どう思ってる?」
俊兄さんは、スマホから視線をずらして顔をしかめた。
「釣りのことか? 別にどうも思わないよ。いつもの兄貴の自己満足だろ」
私は俊兄さんの言葉が悲しかったけど、それでも続けた。
「でもさ、今日の夕食で感じたんだ。みんな、本当は仲良くしたいんだって。特に母さん、すごく気を使ってたでしょう?」
俊兄さんは、また、無言でスマートフォンを見つめ続けた。そして、また、私の方を見たので、私は続けた。
「母さんが一番願ってるのは、みんなが仲良くすることだと思う。私たちも協力して、母さんのためにも、家族みんなが仲良くできるようにしようよ。」
俊兄さんは体を起こして私を見つめた。
「でも、俺は……。兄貴が嫌いなんだ。あいつのせいで」
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