光と影

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「僕たちも、移動するよ。とりあえず、大学病院を目指そう。もし、別の病院に搬送されたと連絡があったら、進路を変更する」  三角板を片付けて、翔兄さんは、運転席に座り、私は助手席に座った。 「そういえば、翔兄さんは免許を持ってたんだよね」 「ああ、行くぞ」  車は走り出した。翔兄さんらしい安全運転だ。  私のスマホに俊兄さんからメッセージが入る。大学病院に到着したと。  なぜ、翔兄さんじゃなくて私にメッセージをするように指示したのか不思議だった。私が助手席にいて、翔兄さんは運転中に、メッセージが入ることを予測してのことだった。やはり、敵わないと思った。  やがて病院に母さんが到着し、四人で待合室のベンチに座っていた。父さんの病名は心筋梗塞だった。  医師から、父さんの緊急カテーテル検査が成功し、冠動脈形成術もうまくいったとの報告を受けた。しかし、父さんはICUに入るため、面会は許されなかった。母さんは少し安心した表情を浮かべたものの、その目にはまだ不安の色が残っていた。  四人は重い気持ちを抱えたまま、病院を後にし、車で家に帰った。家の中に入ると、重苦しい沈黙がしばらく続いた。やがて、母さんが口を開いた。
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