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「父さん、大丈夫かしら…」
その声は不安で震えていた。
翔兄さんが優しく答えた。
「きっと大丈夫だよ、母さん。お医者さんも手術がうまくいったって言ってたし、今は休んでるだけだと思う」
私の心の奥底でまだ不安がくすぶっていた。そして、自分に言い聞かせるように言った。
「そうだよ、母さん、父さんは強い人だから、きっと元気に退院してくるよ。」
俊兄さんは黙ってその場に座っていたけど、やがて口を開いた。
「でもさ、畑のヒマワリのすき込み作業、どうするんだ?」
みんなは驚いたように俊兄さんを見つめた。
「何、それ? わかるように説明してくれ」
そう言ったのは、翔兄さんで、母さんも同意見らしく目をぱちぱちさせていた。
「兄さん、母さん、まさか、なんで、父さんが畑にひまわりを植えているのか知らないの?」
「あれだろ、いっぱい人が観にくるよな。観光のためとか……」
「花を売るためじゃないの?」
俊兄さんは、私たち三人をぐるりと見渡した。その目は雄弁に「そんなことも知らないのか?」と言っている。
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