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「緑肥のためだよ。土壌改良のため。
ひまわりは根が深く伸びる性質を持ってるから粘土質で硬い土壌も柔軟にするんだよ。 根から分泌される物質によって、土壌微生物の活動が活発になって、土の団粒構造が改善されるんだ。まったく、部活とか勉強ばかりやって、父さんの手伝いをやらないんだから」
「で、そのすき込みってのをやらないとどうなるんだ?」
「種子ができてしまうと土壌内で分解しにくくなるから、逆効果になるんだ。このままにしておいたら、退院してから父さんが困るんだ。だから、今すぐやらないとダメなんだ」
俊兄さんの声は真剣そのものだった。
翔兄さんはしばらく考え込んだ後、頷いた。
「そうだな、俊の言う通りだ。父さんが退院した時に、畑のことを心配させたくない。三人で力を合わせてやろう」
「私だってやるわよ」
そう言う母さんに翔兄さんは、言った。
「母さんにやらせたことがわかったら父さん、怒るよ。喜ばないよ」
父さんと母さんが結婚する時、お互いの仕事に口を挟まない、手を出さない、と約束したと聞いている。翔兄さんの言うことはもっともだ。
口を尖らせてプイッと横を向き拗ねた母さんの顔はまるで子供のようだ。
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