光と影

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 俊兄さんがトラクターを止め、「終わった…」と一息ついた後、翔兄さんと私が駆け寄った。  三人は汗だくになりながらも、笑顔で畑を見渡した。ヒマワリの茎や葉がすき込まれ、土が新たな命を受け入れる準備が整った光景は、努力の成果を実感させるものだった。 「初めて、三人が力を合わせたんじゃないかな」  翔兄さんが、微笑んでボソリとそう言った。  俊兄さんが私を見た。 「俺たち、光になれたかな?」 「うん、今まで真っ黒だったけどね」  翔兄さんは怪訝な顔をして「なんの話だ?」と言ったけど、二人で笑って誤魔化した。  翔兄さんの初期対応が良かったため、父さんは、なんの後遺症もなく退院した。翔兄さんは東京に戻り、俊兄さんと私は父さんの農作業を手伝った。 「父さんは口を出すだけでいいからね。俊兄さんと私がやるから」 「ありがとうな」  私は黙々と畑仕事に精を出しながら、皆で協力し合った日のことを思い出していた。あの日、初めて本当に一つになれた気がした。兄弟全員が力を合わせた瞬間、私と俊兄さんは影から抜け出し、光の中に立った気がした。  ふと気づくと、私の心の中にあった暗い影は、いつの間にか消え去っていた。俊兄さんも、母さんや父さんから何を言われても反抗しなくなった。もう自分たちを影だと思うことはなかった。むしろ、互いに支え合いながら共に輝く存在になったのだ。  畑の作業を終え、空を見上げると、太陽が静かに沈みかけていた。柔らかな夕日の光が畑を黄金色に染め、私たちの顔にも暖かく降り注いでいた。 「これからも、ずっと一緒に頑張ろうね」  私が微笑みながら言うと、俊兄さんも微笑んで頷いた。  家族の絆は強くなり、私たちの心にはもう黒い影がなかった。光が、私たちの心の中で輝いていた。 了
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