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高校の夏休みの補習授業から帰ると、東京の大学に行っている翔兄さんが帰省していた。
「彩、元気か?」
久しぶりに見た爽やかな笑顔が、私の心にざらりと波を立たせた。わざわざ帰ってこなくてもいいのにと、うつむいた。
翔兄さんだけが、母さん似のイケメンだ。母さんは大学で物理学の准教授をしている。顔が遺伝すると頭の中まで遺伝するのだろうか。私と双子の俊兄さんは、父さんに似て顔が薄いし、頭も良くない。
「母さん、どうして父さんとなんか結婚したの? そのせいで私、父さん似になって迷惑してるのよ」
そう言って、母さんを責めたこともある。
母さんがイケメンと結婚していたら、私は美人だったかもしれない。
いや、本当にそうだろうか。自分はお父さん似なのだから、母さんではない母親と父さんの間に生まれた可能性が高い。それなら結果はもっと酷かったかもしれないとため息をつく。
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