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「どうした? ため息なんてついて」
「なんでもないわ。元気よ。翔兄さんほどじゃないけど」
「そっか、それはよかった。俊も元気なんだろ」
どうしてこの人には嫌味が通じないのだろうか。
いつだって人の言葉をそのまま受け取って、裏で何を考えているかなんて考えもしない。いつもいろんな方向からスポットライトを当てられていて影がない。いつも、まぶしくて、近づくとその光で私には大きな影ができる。そして、自分の影に嫌気がさす。
あなたのために私も俊兄さんも迷惑してんだ、と言ったところで、「なんで?」なんて、純粋な子供のような目で聞いてくるだろう。
「元気だよ」
一言返して二階に上がった。翔兄さんの部屋は私の部屋になった。翔兄さんの居場所は二階にはない。追ってこないはずだと荷物を置いた時だった。
「ただいま」
俊兄さんの声だ。これは見ものだと階下に降りた。リビングで三人が鉢合わせた。
翔兄さんと顔を合わせた俊兄さんは、舌打ちせんばかりのいらつきぶりだ。
だよね。うんうん、わかる。
「俊、久しぶり。学校は……どうした? 女の子にでもふられたのか?」
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