光と影

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 俊兄さんがモテないのを誰のせいだと思ってるんだ。  田舎の高校では、翔兄さんは伝説の人になっている。野球部でエースで四番。ワンマンチームで甲子園出場。成績は抜群で現役で旧帝大。  その弟と妹が入学してくるというので、学校の期待値はマックスだった。だから、二人を見て、誰もが落胆した。  でがらし──これが二人の二つ名だ。  成績が悪いわけじゃない。  平均点あたりをうろつく、ごく平凡な二人なのに、下手に期待値が高いために、劣等生だと思われている。誰もが翔兄さんと兄弟だと知ると羨望の眼差しで見て、勝手に落胆する。  翔兄さんのことを知っている人はまだいい。顔が全然違うから、ひょっとしたら能力が全然違うのかもと思ってくれる。 「まあ、男を磨け。努力すればいい。ファイト!」  二言目(ふたことめ)にはこれだ。努力すればなんとかなると思っている。勉強でもそうだ。  あなたは、努力すればするほど身につくかもしれないけど、私たちは、必死に努力してなんとか覚えても、次の日にはその八割を忘れている。    天才は、頭の構造が根本的に違うくせに、自分と周りの人間が同じ構造をしていると思っている。  だから、結果を出せない=怠け者と判断する。  もはや会話が成り立たず、俊兄さんの苛立ちは頂点に達している。 「うるせー!」 「反抗期か? 怖い怖い」  場を和ませようとする冗談も、上から目線に聞こえる。    こうやって目の前で、苛立つ俊兄さんのことが、私はやっぱり嫌いだ。その姿が私と重なるからだ。私と俊兄さんは、同族嫌悪に似たライバル心を持っている。
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