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私は苛立ちを抑えきれなかった。
「俊兄さんが、いちいち口出しするのが嫌なの。余計なことは言わないで」
俊兄さんも感情を抑えられなかった。
「俺だって同じこと思ってるよ。いつも、お前が俺のことを見下してるように感じるんだから」
母さんはそのやり取りを見て深くため息をついてから顔を上げた。
「お願いだから喧嘩をしないで」
私たちは黙り込んだけど、お互いに視線を外していた。
「あなたたち二人とも、自分ができないことをお互いに教え合うのよ。それが家族ってものでしょ」
母さんはそう言ってキッチンへと戻った。
毎回、同じやりとりの繰り返しだ。わたしたちが喧嘩をして、母さんが家族だから助け合えという。私だって、そうしたいよ。でも、できないんだ。
夜になり、父さんと母さんは、兄の帰省を喜んだ。そりゃ、自慢の息子ですもんね、嬉しいよねと、そんな言葉が脳裏に浮かぶ。
久しぶりに家族全員が揃った夕食だった。
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