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母さんは満面の笑みを浮かべ、みんなが喜ぶような料理をテーブルいっぱいに並べていた。父さんはいつものように優しい笑顔でその様子を見守っている。
私はその様子を見つめながら、心の中に渦巻く感情を押し殺していた。翔兄さんの存在が、ここにいる全員の心に影を落としていることを感じ取っていたからだ。
母親に似て美しい顔立ちと、優れた頭脳を持つ翔兄さんが帰省するたびに、俊兄さんと私がいかに卑屈であるかを痛感させられる。
俊兄さんも同じ思いを抱えているのだろう。いつもより口数が少なく、視線を下に向けたままだ。俊兄さんと私は、お互いに自分を映す鏡のような存在であり、それがなおさら嫌悪感を増幅させていた。
母親はそんな私たちの心情を察しているのか、いつも以上に明るく振る舞い、翔兄さんの話に笑顔で応じていた。
「東京はどう?」
母さんが翔兄さんに尋ねると、翔兄さんは自信に満ちた笑顔になった。
「大学は楽しいよ。新しい友達もできたし、サークル活動も充実してる。」
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