光と影

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 私はその答えを聞きながら、胸の奥で何かがチクリと痛むのを感じた。そりゃ、あなたみたいになんでもできたら楽しいでしょうよ、という言葉を飲み込んだ。  俊兄さんは、その答えに不機嫌そうな表情を浮かべ、手元の箸を弄りながら黙り込んでいた。  母さんがその様子に気付き、俊兄さんに話しかける。 「俊も学校は順調?」  そこで、同じ話題を振るのはかわいそうだろ、という言葉を、また飲み込んだ。  母さんと翔兄さんは、きっと同じ世界が見えている。でも、それは、私と俊兄さんが見ている世界とは、別の世界だ。  俊兄さんは一瞬母さんの顔を見て、すぐに視線を逸らした。「まあ、普通だよ。」  その答えに母さんは少し困ったような表情を浮かべたが、すぐに笑顔に戻り、優しく声をかけた。 「それでもいいのよ。自分のペースで頑張ってね。」  自分のペースで? 馬鹿にしているみたいに聞こえた。おそらく、母さんにそんな気持ちはない。俊兄さんは、そっぽを向いて頭をかいた。  
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