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あれから私は、せいちゃんのお見舞いの間に、勉強を頑張った。日に日に、弱って行くせいちゃんを見たくはなかったけど…。
妊娠して十ヶ月…まだせいちゃんは生きてる。そろそろ入院した方が良いと言われ、私は入院することになった。
せいちゃんが入院している病院は、産婦人科も入っているため、せいちゃんの主治医が気を利かせ、私の病室から近い部屋に移してくれた。
予定日が近付くにつれ、段々不安になってきた…。
予定日の一日前に破水し、そこからトントン拍子に事が進、無事元気な女の子を出産した。
出産して少し間を空けて、我が子をせいちゃんに見せるため、せいちゃんの病屋に足を運ぶ。
「せいちゃん!産まれたよ!」
「今日?だっけ?」
「一日早まったみたいで…」
「良かった!お疲れ様…」
そう言って、せいちゃんは目に涙を浮かべる。まさか我が子を見るまで生きれるとは、思っても見なかったからだろう。
「抱いてみる?」
「抱いてあげたいけど…最近腕に力入らなくて…」
せいちゃんは、そう言って左手を私に近付けた。
何がしたいか分かったので、せいちゃんの脇に座って、我が子がせいちゃんの手の届く所まで持っていく。
「可愛いな…名前…どうしようか?」
左手で、我が子の頬を撫でながらつぶやく。
「誠奈ってのはどう?」
「誠一郎の誠に…ルナのナ…か…悪くないね」
せいちゃんは、微笑みながら呟いた。
「もう少し…なんなら、誠奈が小学校にあがるまでは…生きたいなぁ…」
「…」
私は言葉を失う。せいちゃんの主治医は、もって後一ヶ月だろうと言っていたからだ。
「今日は、ずっといて欲しい」
「出来る限り居るわ!」
私は微笑み、誠奈を撫でているせいちゃんの左手にキスをした。
誠奈を産んで半月後、私と誠奈に見守られながら、せいちゃんは息を引き取った。
あまりにも突然の出来事に、ショックすぎてこの日は上の空だった。
しかも、せいちゃんの誕生日に息を引き取るとは、何かの因果なのかと疑ってしまう。
そこから、珠江さんもこちらに上京してきて、バタバタした毎日を過ごした。
最後のせいちゃんの言葉は、「僕は…ルナに出会えて…ルナと一緒になれて…誠奈まで産んでくれて…幸せ者だ…」だった。
挫けそうになったが、せいちゃんの言っていた言葉が私を支えてくれた。
それに向かって…突っ走れ!
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